切れないつながりが

「問題は、彼とはジムで知り合ったため、別れた後もそこで顔を合わせることでした。

私は行けば友達もいるしまだ安心なのですが、彼のほうはいつもひとりだったから、私を見かけるとこそこそとどこかに消えるのが、まだ意識してるんだって感じて嫌でしたね……」

男性がいつも来る時間帯を避けてジムに足を向けていた美雨さんでしたが、社会人なら限られた時間の調整は難しく、どうしても姿を見ることは多かったそう。

時間のある休日も、「こんな人のせいでジムに行く時間を奪われるなんて」と悔しい思いがあって、元彼の不安定な様子を見ることになっても無視して通っていました。

「別れたことを知ったジム友さんたちが、私が来てからすぐストレッチのコーナーを離れる元彼を見て『わざとらしくない?』『あ、ほらこっち見てるよね』ってひそひそと話していて、相変わらずじめっとした様子でした」

と、美雨さんはため息をつきます。

一緒の空間にいれば何かの拍子で物理的な距離が近くなるときは避けられず、「社会人として、挨拶だけはしていました」と美雨さんは話しますが、そのときに大げさな反応を見せることも、ストレスだったといいます。

ジム友さんたちから「あれは絶対に未練があるよね」と言われた美雨さんでしたが、付き合っているときも自分の気持ちを前に出さなかったのを知っているので、「間違っても復縁なんて言い出さないだろう」と予想していました。

ある男性と知り合って

元彼とのぎくしゃくした空気も「そのうちどうでもよくなりました」と割り切った美雨さんは、ジムで男性Aさんと知り合います。

「私が正社員で働いている会社の近くの飲食店に勤めている人で、ジムでたまたま目が合ったときにお互い『ああ』って声が出て、おかしかったです」

こんなところで会うなんてと話してみたら、Aさんは二歳年上でジムには入会したばかりとわかり、それならといろいろと情報を伝えたことから親しくなりました。

「こんな偶然ってあるんだな」と新しい出会いにわくわくした美雨さんは、自分以外の男性と仲良く話すのを見て元彼はどう思うか気になったそうですが、向こうから声をかけてくるようなことがいっさいなかったため、「どうせ何もないだろう」と思っていました。

Aさんとはお店で会っても楽しく会話ができて、彼女がいないこともわかり、急速に仲が深くなっていったといいます。

「お店では当然仲のいい感じなんて出さないのですが、出てから『顔を見ることができてよかった』ってLINEでメッセージをくれたりして、ドキドキしましたね」

LINEのIDの交換は美雨さんから言い出したことで、おかしなメッセージが来ることもなく、楽しくやり取りができていました。

その日の夜にジムでまた会えるとうれしくて、「隅っこで少し話し込むようなこともあった」と振り返る美雨さん。

このときは、ちらちらと視界をよぎる元彼のことなど、ほとんど意識していませんでした。