元彼の変化
ジム友さんたちからも「いい雰囲気だね」と冷やかされていた美雨さんは、あるとき元彼が以前より近くにいることに気が付きます。
「マシンを使っているときとか、ふと見たら元彼が斜めのマシンに座っていることとかが増えて、ちょっと怖かったですね。
明らかに自分をアピールしているというか、付き合う前もそういうところがあったのを思い出して、何で今ごろ近付いてくるのだろうって」
Aさんと仲良くしていることが原因なのだろうかと美雨さんは考えますが、別れていれば元彼に口を出す権利はないのは当然で、「逆にこれで離れてくれたら」と思っていたそうです。
ところが、ひとりでいる美雨さんに「今日は◯◯さんは一緒じゃないの」とジム友さんの名前を出して話しかけてきたことがあり、それからも元彼の気配は近い状態が続きます。
「ある日なんか、ジムを出たら外に元彼が立っていてびっくりしました。
『俺もいま出てきたところ』って、本当は待っていたんじゃないのって言いたくなって、時間も夜の十時を過ぎているしすぐ離れました」
一方で、Aさんがジムにいるときは距離を取って近付いてこないことがわかり、Aさんと親しいことが元彼を刺激したのだとは、はっきりと感じていました。
「正直に言えば、面倒くさいの一言でした。
別れたときの素っ気ない態度とか冷たい言葉とかが頭に浮かんで、今さら近付いてくるとか本当に自分勝手だなと思いましたね」
別れてまでストレスを溜めたくないと思った美雨さんは、思い切って元彼への挨拶をやめ、話しかけられてもすぐ離れるようにしたそうです。
ある日ポストに入っていたもの
そんなある日、ひとり暮らしのアパートに帰った美雨さんは、ポストに切手の貼られていない封筒があることに気が付きます。
「何これ……」
表には自分の名前だけが記入されており、その筆跡は元彼のものだとすぐに気が付いた美雨さんは、ぞっとしたといいます。
「封筒の口は糊付けの上にセロハンテープまで貼ってあって、気持ち悪かったです……」
何が書かれているのか、「まさか復縁の申し込みでは」と不安になった美雨さんですが、恐る恐る取り出した一枚の手紙には、その真逆のことが書かれていました。
「絶縁状
◯◯へ
金輪際、俺に近付くな。
お前とはもう縁を切る。
新しい彼氏とは順調ですか?」
こんな出だしで始まる直筆の手紙は、美雨さんへの恨み言が綴られており、
「ボールペンで書かれていましたが、筆圧が強くて紙がたわんでいる部分とかあって、執念のようなものを感じて本当に怖かったです」
と、美雨さんは恐怖で言葉を失ったといいます。
「絶縁状」という強い表現は、元彼の、美雨さんに向ける執着の深さが伝わるようでした。