一変した生活

すぐにジム友さんに連絡して事情を話した美雨さんは、
「それ、絶対に捨てないで。
ストーカーの証拠になるから」
と言われ、燃やそうとしていたのを思い留まったそうです。
「触りたくないので、ジップロックに入れてから封筒に突っ込んで封をしました」
ストーカー、と聞いてその通りだと感じた美雨さんは、次の日に休会届をジムに出し、Aさんには「仕事が忙しくなったから」と伝えました。
「私を見るから元彼はいつまでもつきまとうのだと思ったし、来なくなればまた家まで押しかける可能性もあって、しばらくは防犯ブザーを持ち歩いていました」
帰宅した際の待ち伏せも考えていたという美雨さんですが、幸いにもそんな事態は起こらず、手紙もその一通だけでした。
「ジム友さんがジムでの元彼の様子など確認してくれていたのですが、私が来なくなってから『私のことも避けるようになったから、手紙のこととか私が知ってると思っているだろうね』と、相変わらず挙動不審なようでした」
Aさんとはジムでなくてもお店で会えることができ、そんな状況まではさすがに元彼も把握していないだろうとは思ったものの、
「Aさんを巻き込むのが怖くて、手紙を読んでから二週間くらいはお店に行くのは控えました」
と、生活に影響が出ていたといいます。
思い詰めた人間の状態

その後、元彼からの接触は今もありません。
「元彼はジムをやめました。
私がまったく来なくなったのと、ジム友さんたちから冷たい目で見られることに絶えられなかったのだと思います」
と、今は平穏な暮らしを取り戻した美雨さんは静かな口調で話してくれました。
元彼への恐怖から元気をなくしていた美雨さんをAさんは心配してくれて、「結局、全部話してしまった」そうですが、ふたりの仲は順調で週末は一緒に過ごすことが増えたそうです。
「Aさんが、元彼についてすごく怒ってくれたというか、『何かあれば警察に行こう』といつも電話やLINEをくれて、本当に心強かったです。
何かあればAさんも巻き込まれると思ってそれも怖かったのですが、元彼がAさんに接触することはなかったですね」
「絶縁状」をわざわざポストに入れに来る元彼の状態を考えれば、そこまで思い詰めた人間が何をするか、恐怖を覚えるのは当然です。
未練がありながらそれを言い出せないうちに元カノが別の男性と親しくなり、そこでまだ素直になれず攻撃に転じるような元彼とは、関わりを断つことが最善。
話し合いを持とうとすれば、「絶対に以前と同じように不貞腐れたり嫌味を言ったりする」という確信があった美雨さんは、自分の気配を消すことで執着から逃れることに成功しました。
自分の状態を正しく見ることができていない相手には、客観的な思考も解決策も望むことは難しいのが現実です。
物理的にも心理的にも距離を取るのが自分の安全を守る第一の策であり、「関わらない」を油断なく考えることが重要です。
理不尽であっても、相談する先を複数用意する、証拠を残すなど、身を守る工夫を忘れてはいけません。
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元恋人がいわゆるストーカー化してしまうと、生活にどんな影響が出るかわかりません。
異常な言動でも「やれてしまう」人には、相手が悪いという思い込みも強く見られます。
考えるべきなのは未来の自分、しっかり守っていく意識を心がけたいですね。