血がつながっているというだけでは埋められない溝が、時に親と子の間でもある場合があります。

皆さんの中にも、自分の母親、又は父親が苦手だったという方もいると思います。

その原因は、単に相性が悪いということもあるかもしれませんが、お互いの心理的距離が、誤解や思い込みを生んでいたのかもしれません。

親との関係から生じたわだかまりが、すぐに消えることはないかもしれません。ですが、子どもが生まれて自分も親になったことで、親との関係が改善されることはあるようです。

もちろん、悪くなるケースもないとは言い切れませんが、今回は、子どもが生まれて親との関係がよくなった2人のママのケースをご紹介します。

ママになって親のありがたみがわかった

Sさんは3歳の男の子のママ。

当時はワークライフバランスやイクメンなどという言葉のなかった時代ですから、父親は毎晩遅くまで仕事をしたり、出張も多かったりで、母親は今でいうワンオペで、Sさんと年子の弟の子育てをしていたそうです。

Sさんは子どもの頃から母親と仲が悪く、特に思春期には家の物を壊すほどのケンカをすることも。自分のやることなすことに口を出してくる母親が、重荷で仕方なかったそうです。

成人後、表面的には関係は落ち着きましたが、母親が言う言葉のひとつひとつを、「自分とは合わないな」と感じていたそう。

逆に、忙しくてあまり一緒にいる時間のなかった父親とはウマが合いましたが、その父親は、Sさんの結婚を待たずに病気で亡くなります。

母親との関係に変化の兆しが現れたのは、Sさんの出産後です。
母親は、産後に休むことの大切さを力説、産後しばらくは家事などをすべてSさんの代わりにやってくれます。

初孫であるSさんの子どもにも惜しみない愛情を注いでくれる母親をみて、Sさんは自分が愛されて育ってきたことを実感できました。

Sさんは、母親が年子の姉弟をワンオペで育てくれたことにも、あらためて尊敬の念を抱いたと言っていました。

親としての価値観が一致した

さらに、子どもを持って初めて原発や政治問題といったことに関心を持つようになったSさんと、すでに市民運動に熱心だった母親とは、意見が一致することが多くなりました。

子どもにどんな未来を残したいかというテーマで話をすることもあるそうです。

「子どもを持たなかったら、自分の周りのことにしか関心を持てなかったかもしれません。母親と政治の話をすることもまったくなかったのですが、最近はかなり話すようになりました。こういった問題に無関心な人もまだ多いですが、社会的なことにも目を向けている母を誇りに思います。」