イライラ・キレやすい子に試してみたい食事法
今回のAくんのように、発達障害と診断されている子に限らず、好き嫌いが激しく、甘いものが大好きな偏食ぎみの子や、イライラしたり、キレやすかったりする子もいるでしょう。
そのような子どもにも、グルテンフリーやカゼインフリーの食事はおすすめなのでしょうか? 梶先生に尋ねたところ、次のように回答いただきました。
梶「おすすめです。グルテンやカゼインは、摂取すると消化管で分解され、グリアドモルフィンとカソモルフィンというペプチドタンパクに精製されます。
このグリアドモルフィンとカソモルフィンは脳のオピオイドレセプター(受容体)に結合し、脳内神経に作用することで、交感神経を刺激して、情緒や行動に影響を与える可能性が示唆されています。
またグルテンやカゼインが、リーキーガット症候群(※)を起こすことで腸内細菌叢が乱れ、セロトニンやオキシトシン、ドーパミンといった神経伝達物質のバランスが崩れ、情動や脳機能の不安定につながることが示唆されています。特にADHDの子どもでは、グルテンフリー・カゼインフリーの食事を摂取することで、情緒や情動が改善されたという報告があります」
※炎症を起こした腸の粘膜から、消化されきっていない食べ物の成分や、有害な化学物質、毒素などが体内に漏れ出してしまい、それに身体が反応することでアレルギーを始めとしたいろいろな不調をきたしている状態のこと。
もし心当たりがあるなら、グルテンを含む小麦製品やカゼインを含む乳製品などを減らしてみるのもいいかもしれません。もちろん、合わないと感じたら、無理はせずすぐに通常通りの食事に戻してくださいね。
甘いもの好きの子の食事を変えるには?
また子どもの食事を見直す際に、悩ましいのが、パンやお菓子、ジュースなどの甘いもの好きの子どもだった場合。親としては子どもから甘いものを奪うのは至難の業ですが、どんな風に対応すればいいのでしょうか。
梶「糖質は脳内で高度の依存性を作るため、即座に止めることは困難です。そこで当院がおすすめしているのは、まず、ゆるやかな糖質制限から始めること。
ジュースを飲む習慣があるご家庭は、ジュース(果物ジュースも含む)をノンカフェインや低カフェイン飲料である水、麦茶、ジャスミンティー、ルイボスティーなどに変えることから始めることをおすすめしています。
お菓子も、市販のお菓子の中で、お砂糖を使っていないお菓子から始めて、徐々にお菓子を摂取する回数を減らしていくのが良いでしょう」
ゆるやかな糖質制限なら、子どもも徐々に慣れていってくれそうですね。
梶「熱心なお母様には、お子さんと一緒にお菓子を手作りしてもらうことで、砂糖依存症を克服していただいています。
砂糖をラカントやステビアなどの代替甘味料に変更して、通常通り、お菓子を手作りするのです。また親子一緒にお菓子作りを楽しむことで、コミュニケーションもとることができ、親子間の愛着障害がある場合に克服することもできます」
お菓子を作ることを楽しめれば、砂糖が他のものに代替されたとしても、子どもも納得して美味しく食べてくれそうですね。
今回ご紹介したのは、あくまで一例。実際にはそれぞれの子どもによって不足している栄養素が異なります。
他の症状と不足している栄養素との関係については、梶先生の著書で解説されているので、気になる人は、ぜひチェックしてみましょう。
【取材協力】
梶 尚志(かじ・たかし)先生
梶の木内科医院 院長
総合内科専門医、腎臓専門医、家庭医、総合内科専門医として患者を診察する中で、通常の診察では解決できない「体の不調」に栄養学的なアプローチから治療と生活指導を行う。
著書に『え、私って栄養失調だったの? その不調は病気でなく状態です!』『え、うちの子って、栄養失調だったの? その不調は食事で改善します!』(みらいパブリッシング)がある。
































