横浜にいながらの国際人育成

1年生の中国語の授業風景

日本人児童の入学希望増加に対して受け入れ体制はあるとしても、華人・華僑を優先しているということは、日本人児童にとって狭き門であることに間違いはない。それでも中華学校にわが子を入れたいと思う理由はどこにあるのだろうか。さらに、横浜中華学院の教育方針を伺ってみた。

同学院の教育方針は国際人の育成だという。

もともと華僑のための教育機関として設立された経緯があるため、アジア系であるならば国籍や出身に関してはおおらかな傾向があったようだ。そのため、学校全体が家族的な雰囲気で、日本の学校にみられるような陰湿ないじめは全くないらしい。

この‘国籍に対しておおらか’という校風がグローバル化の傾向に従って、注目されるようになり、中華文化を中心に国際人を育成しているという評価につながったのだ。

中国語と日本語の掲示物が混ざる小学部の教室前
 

そして、その中心には語学教育がある。

学校側も入学希望者増の最も大きな要素は語学教育だと把握して、これを中心に世界に通用する国際人の養成を教育方針に据えたという。小学校で使用される教科書の言語の割合は中国語11:日本語4:英語1、それぞれ科目ごとに言語が決められ、中国語は台湾の教科書、日本語は日本の教科書が使用されている。

 

国際人の進学先は日本の大学!?

しかし、中学、高校になるにしたがい、日本語の時間数が増えていく。これは、現地である日本の学校への進学を意識しているためだ。実際、国際人の育成という教育方針の割に、台湾を始め国外の大学進学は意外に少なく毎年数えるほどなのだ。

逆に、日本語と中国語の双方を習得させ、進学傾向も国内の学校が多いことが日本人児童も安心して預けられるという父母の信頼につながることになった。在学中は台湾との交換留学を勧め、進学は日本国内、という方針なのだ。事実、日本の大学への進学率は高い。例年の合格実績をみても、慶応、明治、法政、中央、明治学院、日本大学等名門校ばかりだ。

 

中華学校に子供を通わせたい理由

佐賀光宏さん

横浜市内にお勤めの佐賀光宏さんは3歳と8歳のお嬢さん2人ともを横浜中華学院に通わせている。日本人の佐賀さんご夫妻にとって中華学校を知ることになったのは、たまたま仕事の関係でその教育方針に触れたからだという。

そして、子どもたちに“地元”となる場所を探していたこととも重なり、お祭りなど地域のつながりの強い街、中華街に根を下ろそうと考えたそうだ。

入学にあたり最も魅力を感じたのは、横浜中華学院の家族的で暖かい雰囲気だったという。また、中国語の言語と文化を、子どもの頃から身につける環境を与えたいという思いも強かったようだ。「英語ではなく?」という質問に対して、ご自身の経験上、英語よりも中国語の方がこの先身につける言語としては難しいだろうというお考えだった。

言語というのは文化を同時に教わることで身につくもので、学校環境として非常に魅力的だとも話してくれた。一方で、日本の文化や歴史の部分が足りなくなるのではないかという懸念もあるようで、どのように家庭の中で教えていこうかと思案されていた。