「普通は絶対にやれない」たつき監督の神業的な努力

『けものフレンズ』以外に、ヤオヨロズという会社についての質問も飛び出しました。ヤオヨロズの特徴を聞かれた福原さんは、

「うちのスタジオの場合は、ほとんどのパートをたつき監督が取りまとめています。

普通のアニメは前の工程を決めてから次の工程にと順番に作業が進んでいきますが、うちでは作業中に前の工程に戻って作品のクオリティを上げたりする。なぜそれができるかというと、監督がひとりでシナリオ・コンテ・演出をやっているからです。

本当に神業的な努力があってこそなので、普通のアニメ監督では絶対にやらないというか、やれないと思います。

ほかのスタジオは100人規模が普通ですが、うちのスタジオはメインスタッフが少数。その分密にコミュニケーションが取れますが、ひとりひとりがより頑張らなければなりません。

今のアニメは、関わるスタッフのほとんどがスタジオの社員ではなく、毎回作品のたびにスタッフを集めて、作品が終わったら解散します。うちのスタジオは同じスタッフでずっとやっているので、そこがほかのスタジオとは違いますね」

とコメント。またオリジナルのアニメ作品の制作についても言及し、

「日本のアニメは漫画原作が主で、オリジナルアニメを作る機会は中々ありません。ですが、たつき監督は学生のころから、いずれ自分がチャレンジしようと考えていたオリジナルアニメのために、アニメの業務内容すべてをマスターしようと準備をしていました。素晴らしい先見性だと思います。

アニメ制作は、作り始めてから完成まで2年くらいかかります。なので最初の構想はとても大事で、すべてがその発想の上に成り立ちます。完成したものは最初から全部決められていたこと。ヒット作が生まれたとしたら、最初の段階で決めていたことすべてがヒットした理由になっているので、何度も頭の中でシミュレーションすることが大切です」

と語りました。

手描きかCGかよりも、大事なのは…

またヤオヨロズが手描きアニメではなくCGアニメを制作している理由についても質問が。CGアニメ制作への想いをカナダのファンに伝えました。

「アニメの仕事をし始めたのは5年前から。日本は手描きアニメが主流で、同じやり方ではたくさんの先輩がいるので居場所がありません。そこで新しい手法として注目したのが、まだ黎明期であったCGでの大人向けアニメの制作です。

ただ日本のアニメファンは、CGより手描きのアニメのほうが好きです。そのため僕らは、制作者の都合ではなくアニメファンにとって“CGであることの魅力”がないといけないと思っています。

たとえば『てさぐれ!部活もの』では、声優同士のコメディの間や会話の面白さをCGで表現しました。ただ、もちろんそういう作品はめったにありません。

大抵の日本のアニメではCGはロボットや戦車や軍艦に使われることが多いですが、日本のアニメ作品の多くは美少女を描かないといけません。最初はかわいい女の子をCGで描くのは難しいのでは、と思っていましたが、たつき監督はかわいいキャラクターをCGで表現することができる逸材なので、一緒に作品を作りませんかとお誘いしました。

実際やってみたところ、CGキャラクターの見た目に関しては、1話~2話まではなかなか見慣れないけど、3話以降は見慣れてきて、放送が終わったあとはCGのキャラクターのほうがかわいい、という視聴者の反応もありました。

つまり人間の脳みそは思い込みが大事で、手描きかCGかよりも、キャラクターを魅力的に作ることができれば、方法はどちらでもいいのではないかということです」