できる限りシンプルで把握しやすい家計にするには

通帳と紙の家計簿で家計を管理したい場合は特に、管理するべき口座数をできる限り減らしていくことが重要になります。

筆者であれば、共働き世帯がシンプルに家計管理をするための口座の作成例として、以下のような取り扱い方を提案します。(子どもが自分のお小遣いを自主的に管理するための口座などは入れていません)

(1)「固定費」引き落とし用口座(兼、父の給与振込用口座)

(2)「流動費」引き落とし用口座(兼・母の給与振込用口座)

(3)家族共有の「投資用口座」兼「貯蓄用口座」(iDeCoも同じ証券会社でまとめる)

「投資用口座」と「貯蓄用口座」を分けないことに違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、これらの口座に入っているお金は全て「余裕資金」であるというとらえ方をすれば、普段使い用以外の口座は1つでも事足ります。

証券口座を作成したことのある方はご存知と思いますが、証券口座の中には株式や投資信託を買うための資金の「一時置き場」のようなものが用意されており、これは取り扱いとしては普通預金とほとんど変わりありません。

ほぼタイムラグなく普段使いの銀行口座に資金の引き出しもできますので、これを「貯蓄用口座」の代わりにしてみるのも一案です。

普段使いの口座から引き落とす固定費は家賃、光熱費、保険料、教育費、各種のサブスクリプション費用など。流動費は食費・日用品費、医療費、ガソリン代などです。

父母それぞれの口座に紐づけたクレジットカードをそれぞれ作り、「家族カード」も作成して、使い分けていくとよいでしょう。

重要なことは、口座から出ていくお金は可能な限り「引き落とし」にしていくことです。普段の買い物などもできるだけクレジットカード決済にし、支出金額と費目を正確に把握するとともに、家計簿へ転記していく手間を減らしていきましょう。

家計簿はきっちり作る必要はなく、普段は引き落としや入金の記録がある通帳の写しやクレジットカードの利用明細を貼り付けるだけでも十分です。半年に1回程度など自分で決めたペースできちんと整理し、収入額と支出額、支出の内訳(費目)とその推移について把握していくとよいでしょう。

家計簿の作成は「無理なく、長く記録を続けていくことで、家計の変化に敏感になる」ことが大きな目的です。最初から完璧な記録を残していくぞと力むことなく、できる限り手間を減らして家計の推移の概要を把握する、というくらいのスタンスで臨む方が、結果として長続きし、家計の変化や無駄遣いに気づけることになるはずです。

進化を続ける「デジタルツール」を使ってみよう

すでにたくさん口座を作っており、減らしていくのは難しいという場合は、デジタルツールを積極的に活用していきましょう。

筆者個人の感覚としては、1世帯で10口座以上を管理しなければいけない場合は、デジタルツールの導入を強くおすすめします。

前述のとおり、21口の口座を持っている筆者の家庭では「家計簿アプリ」が大活躍しています。すべての銀行・証券口座や現金勘定、クレジットカードの利用記録は家計簿アプリに紐づけられ、スマートフォンやパソコンからリアルタイムで残高や出入金の確認が確認できます。

また、残高や出入金の推移も簡単にグラフ化して確認可能できるほか、月次・年次の結果も簡単にまとめることができます。

たまに行う作業としては、やむなく「現金払い」または「現金収入」を処理しなければならない事があったとき、スマホアプリを開いて支出・収入を入力することのみです。

筆者の使用するアプリは「無料版」もあるのですが、その場合は「10口座を超える紐づけ」ができないような設定になっています。

10口座以上の管理と把握をしたい場合は、年間数千円のアプリ使用料金を負担する必要がありますが、筆者としては非常に安い支出だと思って数年前から有料版を活用しています。

さらに個人事業主として確定申告をしなければいけなくなってからは、確定申告の支援作業も可能である有料版のプレミアムコースを利用するようになりました。

家計管理において口座の把握と出入金の管理は基本中の基本ですが、「細かい数字の記録を、費目ごとに整理しつつ正しく残す」という作業は、人力だけでは非常に難しいものです。必要に応じて、積極的にデジタルツールの助けを借りていきましょう。

デジタルツールを初めて使うときは抵抗があるかもしれませんが、各種「家計簿アプリ」の無料版を試してみるのはいかがでしょうか。

数ヶ月使ってみることで、ご自身の家計についてきっと新たな発見があるはずです。

【執筆者プロフィール】
山田 圭佑(KYお金と仕事の相談所 所長)

キッズ・マネー・ステーション認定講師、国家資格キャリアコンサルタント、ファイナシャルプンナー技能士2級・AFP、琉球古典音楽 野村流伝統音楽協会 歌三線 師範、八重山古典民謡保存会 歌三線 教師

東京都出身。大学入学と同時に沖縄県へ移住。大学卒業後、沖縄県庁にて18年間奉職した後にキャリアチェンジ。現在はフリーランスのキャリアコンサルタント・ファイナンシャルプランナー・歌三線師範として幅広く活動。2022年7月に「KYお金と仕事の相談所」を開設。所長を務めている。

「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2023年までに2000件以上の講座実績を持つ。公式サイト「キッズ・マネー・ステーション