ガス漏れの原因その2:自分の両親との関係がうまくいっていない

「うまれる ずっと、いっしょ。」 11月22日 シネスイッチ銀座ほか全国順次公開 ©2014 IndigoFilms, Inc.

「実は子育てに一番影響するのは、自分の親との関係なんです」と言う豪田さん。

「遺伝というのは身体的特徴とか性格とかだけじゃないんです。“人との接し方”、ひいては“子育て”も遺伝するんです。
子育てをしていると、細胞にインプットされている無意識の記憶が顔を出して、知らず知らず親からされて嫌だったことを自分もしてしまうことがあります。もちろん逆もそうです。
親の存在は望むと望まざるとに関わらず、人生に大きな影響を与えてしまいます。
親との関係は、そのまま他人との関係につながりますから、親を許せないと、他の人に対しても許せないという感覚を生み出しやすくなり、子どもやパートナーとの関係も複雑にしてしまいがちです。」

「親に対して感謝が出来ない状態、怒りや失望などの負のエネルギーは、心の“ガス漏れ”を引き起こし、発火しやすい。でも、親に感謝できる状態だと、精神的に安定して“ガス漏れ”が起きにくく、些細な事にも発火しない。
だから、もし親との関係があまり良くない場合は、それを自分なりに見つめ直し、出来れば向き合って良い方向に改善させることが、子育てのイライラをなくす大きなきっかけになると思うんですよ」

●親との関係をふりかえってみる

「僕自身も35年以上、親との関係がうまくいっていませんでした。
でも命と家族の原点である前作の『うまれる』という映画製作を通して、親との関係に徹底的に向き合いました。
両親との仲が劇的に良くなったことで、心の“ガス漏れ”が止まったんです(笑)。
些細な事にイライラして発火しなくなったので、パートナーや様々な人間関係まですごくよくなったんです。それは子どもとの関係にも活きています。子どもに怒る事もほとんどない(叱る、のは別ですが)。
親との関係を改善させると、子育ての悩みも劇的に減る。これは僕の実体験や、さまざまなご家族に会った中で心から実感しています。」

●親に「生んでくれてありがとう」と言ってみる

でも親と長年の確執がある場合、なかなか難しいのでは? 具体的に豪田さんはどんな風に親御さんとの関係がよくなったのですか?

「電話なんてほとんどしたことがなかったのに電話ができるようになりました(笑)。一緒に食事もするようになりましたね。
映画を通して、ひとつの命が誕生するということのすごさに気づき、自分を産んでくれた親への感謝が生まれたことが大きかったです。様々なご家族や誕生を取材・撮影させていただいた事で、親が生んでくれたから自分がいる、という事を心からしっかりと感じる機会をもらいました。“体験”や“気づき”のきっかけがないと、なかなか実感できないですよね」

そして「産んでくれてありがとう」と伝えることができたことも大きかったと言います。

「子育てってなかなか人から褒められない、認めてもらえないじゃないですか。仕事だったら査定など数字で評価されるからわかりやすいけど、子育てには尺度がない。24時間365日を20年近く費やす事に対して、褒められないってやっぱり辛いことじゃないかと思うんですよね」

毎日こんなにがんばっているのに褒められない、評価されない。その辛さは子育てママなら何度も経験すること。

「それは僕たちだけではなく、実は自分たちの親もそうなんですよね。
親に対して何かしらわだかまりのようなものを持っている人はとても多いと思いますが、様々な環境や時代背景の中で、親は親なりに精一杯やってくれたと思うんですよ。幼少期の頃なんて、親が数日、面倒を見なければ、既にこの世にいなかったわけですから……。
だから、もし色々あったとしても、『産んでくれてありがとう』と伝えることは、親にとっても、自分にとっても、すごく大切な事だと思っています。」

『産んでくれてありがとう』という言葉は、親の全人格、全人生を肯定する魔法のような言葉。

「自分も、もし子どもに20年後、30年後に『産んでくれてありがとう』って言われたら、生きててよかったな、子育てしてきてよかったなって思えるじゃないですか。だから親にその言葉を伝えるということは、すごく大切なことだと思うし、そういうことって子どもにも伝わっていて、巡り巡っていつか自分にも返ってくるかもしれない。
子どもから『産んでくれてありがとう』って言われるのは、オリンピックで金メダルを獲得するくらい、人生にとってスゴい事だと思うんです」

“親と関係がよくないから育児も夫婦仲もうまくいかない”という事に気づいてないママも多くいる、と豪田さん。
でも親との関係を改善したり、パートナーとの関係を見直したり…そんなにいろいろ頑張らないとできないの? と思うママもいるかもしれません。
でも「自分のガス漏れの原因」を知って何とかしていかないと、いつまでもイライラは減りません。