ママの“愛情タンク”を満たしてハッピーに!

「よく虐待、ネグレクトで事件が報道されますね。僕の考えですが、本当のネグレクトっていうのは“ママが孤立化していること”を指すと思うんですよ。
虐待しようと思って子どもを産み育てている人なんて本当はいない。命をテーマにした映画を撮っていますし、虐待に関しても僕は結構リサーチしました。虐待防止を目的にした映画上映も100回以上やっています。
でもその中でわかったのは、虐待してしまったママもほとんどが普通の人だし、まさか自分がこういうことをするとは思っていなかった。ママ自身が親やパートナーから愛情をかけてもらえず孤立化してサポートを得られていないこと、親からの負の遺伝を継承してしまったことが主な原因なんです。」

子育ては子どもに愛情を与える仕事。その愛情を与えるママの愛情タンクがカラカラだと、子どもにも愛情を与えてあげることができない、と豪田さん。

「まず身近なパートナーが、ママの愛情タンクを満たしてあげてほしいですね。小さい我が子とどう接していいか分からないパパはたくさんいると思います。でも育児中のママを、全面的にサポートしてあげてほしいです。ママを幸せにするのはパパの“特権”です」

「ママを幸せにしてあげたい」という豪田さんの優しい言葉と思いに取材中、不覚にも何度も涙がこぼれそうになりました。あ、誤解のないようにお伝えしますと、我が家のパートナー、夫は育児にかなり参加してくれてる方だと思います。
でもママの育児環境について、こんなに真摯に考えてくれるパパの言葉は、毎日育児でバタバタしているママには胸に沁みます。
 

「うまれる ずっと、いっしょ。」 11月22日 シネスイッチ銀座ほか全国順次公開 ©2014 IndigoFilms, Inc.

まずは、自分の心の状態をチェックして

ママ自身も、自分のガス漏れ状態や、愛情タンクが枯れかけていることに気づくことが大切、と語ります。

「育児中はどうしても自分のことは後回し。でも自分の幸せって何だろう? と考えて、そこを満たしてあげることが、結局はいい子育てにつながると思うんですよ。
パートナーと愛情を深める、そこは期待できないから(笑)親御さんとの関係を見直す、友人と楽しく過ごす、仕事を充実させる、趣味に打ち込むなど、円グラフを作ってみて、自分はどこが満たされていれば幸せなのかを考えてみる。そういう作業をして自分を満たせられれば、それが子どもへの愛情につながると思うんですよね」

ママが自分のことは後回し、ではなく自分が「どこを満たせば一番幸せなのか」を考えることが、結局はいい子育てにつながる、という深い話になりました。めんどくさい、と思わず自分の「ガス漏れの原因」を深く探ることが、結局は自分がラクになる近道なのかもしれません。
 

子育てとは「子どもが生きる手助けをすること」

2010年、映画『うまれる』が公開された約10日後に娘さんが生まれて、親になった豪田トモさん。
半年くらい育休のようなものを取って(半休半仕事)、育児に積極的に参加されたそうですが、育児のスキルをいくらあげても悩みが増えるばかりで愕然としたそうです。

「オムツを換えても、お風呂に入れても、抱っこをしても子育ての悩みが消えないんです。1ヶ月、3ヶ月、半年、1年……毎日、毎週、毎月、新しい悩みが増える。子どもが二十歳になるまで、さまざまな悩みがやってくるでしょう。その度に「今」に悩んだり対応しているだけでは、子どもの「未来」をうまく導けないって思ったんですよね。
生まれた時は子どもに幸せな人生を、と思っても、現状に対処するのに精一杯で、しっかりとした未来のビジョンが見えなくなってしまっていたんです」

次々と押し寄せる子育ての悩みを前に、豪田さんが考えたのは「子育ての目的」。

「子育てに振り回されそうになって、ふと“子育てって何だろう?”と考えたとき、『子育てとは、わが子が生きていくための手助けをすること』だと思ったんですよね。
じゃあ“生きるってどういうこと?”と考えたときに、シンプルに“生まれて、そして死に向かっていくこと”だと思ったんです」

育児で毎日が精一杯だと、なかなか、そんな先のことまで考えが及ばないのですが……。

「確かに、誰でも避けたいというか目を向けたくないテーマだと思います。でも人は生まれた瞬間から死に向かっていくわけですよね。誰もがいつかは旅立つ自分の人生を、どうやって生きていくか、ここに親がしっかり向き合っていかないと“生きる”ということを子どもに教えられないと思ったんです。
“向き合う力”も筋力と同じで、鍛えないとついていかない。最も“向き合う力”がつくのは、親との関係、そして死に向き合うこと。
親が“向き合う力”をつけていければ、子どもを育てていく上で、どんな悩みがやってきても向き合っていけると思うんです」

食べてくれない、寝てくれない、勉強してくれない……その都度ふってくる子育ての悩みも、もっと大きな視点でとらえたら些細な悩みなのかもしれません。
 

親になるのが怖かった僕が「どんな問題がおきても大丈夫!」と思えるように

最初は親になることも怖かったという豪田さん。
育児中のさまざまな悩みに振り回されながらも、今では、“向き合う力”がついてきたから大丈夫、と思えるようになったそうです。

「ちょっと前までは、娘が理不尽なことで怒ったり泣いたりわめいたりしたら、自分も一緒に怒ってヒートアップすることもあったんですが(笑)、それがほとんどなくなりました。いろいろな問題にぶちあたりますが、高みから見物できるようになりました(笑)」

この境地まで行くのは……難しい? いえいえ、きっと毎日がんばっているママなら大丈夫。
私を含めて子育て真っ最中のママのみなさん、がんばりましょう! イライラしたら、まずは自分のガス漏れを確認しましょうね。

「家族」についてさまざまな角度から考えさせてくれる豪田トモさん監督の『うまれる ずっと、いっしょ。』は11月22日から全国ロードショーです。

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