子どもたちにとっては、待ちに待った夏休みの到来。自由研究に生き物の研究をしようと思っている子をお持ちのママもいるかもしれませんね。

さて、どうサポートしたものか、困ってしまいますよね。

特に東京に住んでいると、自然は遠いもので、珍しい生き物なんていないと思い込んでいる人も多いのではないでしょうか。ビルばかりで自然がないという印象の強い東京ですが、意外なことに、世界都市のなかでも自然は決して少なくないのだそうです。

テレビでも活躍中の生物研究者・川上洋一さんの『東京いきもの散歩――江戸から受け継ぐ自然を探しに』を参考に、東京が100倍面白くなるいきもの散歩に、子どもと一緒に出かけてみませんか?

東京にも自然が多い理由

新宿御苑 空撮

都内でタヌキやハクビシンを目撃したというニュース、今ではそう珍しくもないですよね。

なぜ野生動物が大都会東京に棲むことができるのか。話は明治維新前の東京、つまり江戸時代にさかのぼります。

江戸の町は約70%が大名屋敷で占められていたといいます。大名屋敷は、各藩の大名(藩主)が参勤交代のために1年おきに暮らしたり妻子を住まわせたりするために建てた建物です。

広いものだと10万坪にも及ぶ広大な土地のなかに、邸宅だけでなく、庭園や灌木などがしつらえてあったそう。イメージとしては、皇居のミニ版がいくつも街中にあったという感じでしょうか。

大名屋敷のなかには、今では庭園として市民に開放されている新宿御苑や六義園、教育施設として保存されている国立科学博物館付属 自然教育園など、他にも多数あります。

大名屋敷自体は明治以降には廃止され、売却されたり、さびれてしまたものもありましたが、大名屋敷の庭園は、引き続き大切に管理され、維持されてきました。

その結果、歴史的な意味を持つだけでなく、現代では生き物のサンクチュアリとしての役割も果たしているのです。

タヌキロードが新宿区に?

タヌキ (撮影 坂本和子)

新宿駅から山手線で2駅の高田馬場駅。駅周辺はビルだらけ、慣れていない人は行き交う人の数で酔ってしまいそうなエリアです。

ところがこのあたり、裏通りに入れば、野生の生き物が生息するオアシスがあるというのです!

大名屋敷の跡地が公園や学校に姿を変えた現在も、比較的当時の様子が残されており、中にはタヌキの通り道になっている場所もあるのだとか。

高田馬場駅からもっとも近い生き物スポットとしては、新宿区立おとめ山公園があります。おとめ山とは漢字では「御留山」と書き、つまり将軍家の狩りの場で、一般人は立ち入りが禁止されていたそうです。いかにも野生の動物がいそうな感じですよね。

戦後は何十年も放置されていたため、都心にはめずらしいクヌギやコナラの雑木林も残されています。となると、タヌキだけでなく、昆虫にとってもごちそうの宝庫です。

チョウやカナブン以外にも、運がよければノコギリクワガタに出会えるかもしれませんよ?!

ノコギリクワガタ (撮影 坂本和子)

こういった昆虫が豊富に生息していることも、タヌキが都心に住みつくのを助けているとも言えます。タヌキは雑食性なので昆虫も食べますし、人間が出した残飯まであさることも。

都内に暮らすタヌキはなんと1000頭にものぼるそう。都内には十分な面積を持つ生活環境が乏しいため、タヌキたちは点々と残る緑地を行き来して暮らしているようです。

高田馬場駅周辺は、前出のおとめ山公園を始め、学習院大学、甘泉園公園、肥後細川庭園、椿山荘などに加え、庭木や生け垣の多い住宅街などが多いため、タヌキが東京を生き抜くのを助けているのでしょう。