0歳児からの乳幼児親子教室「輝きベビースクール」、「輝きベビー保育園」を設立、運営している伊藤美佳さんが、1万5000人以上の乳幼児を教えた経験から見えてきたこととして、どの分野でも才能を開花させる人は、子ども時代に親から抑圧されず、自分の意思を尊重してもらっていたという共通項をあげています。

伊藤さんの教育のベースとなるのは、棋士の藤井聡太さんが受けていた幼児教育として最近、注目を集めているモンテッソーリ教育と、ハーバード大学のハワード・ガードナー教授が提唱している「多重知能理論」です。

それらの理論を日本人向けにアレンジし、独自のメソッドで、学力だけでない、その子どもだけが持つ才能を多角的に引き出すことを目指しているそうです。

子どもを持つ親なら、誰だって、子どもが一番輝けることを見つけてほしいと思うもの。ですが、子どもを伸びる方向に導けているかどうかは別の話です。

子どもの才能を開花させるためには、なにが必要なのか、伊藤美佳さんの「モンテッソーリ×ハーバード式 子どもの才能の伸ばし方」を紐解き、考えていきましょう。

それはズバリ集中力

人間が力を発揮するには、集中力が必要です。たとえ実力があっても、気が散ったり、乱れたりしては、普段よりも劣ったパフォーマンスに終わることもありえます。

逆に、実力以上の力を発揮するためには、集中力は欠かせない要因ともいえるでしょう。

子どもは好きなことをする時、驚異的な集中力をみせる時があります。親が呼んでも返事をしないのは、無視しているのではなく、集中のあまり、本当に外部の声が聞こえなくなっているから。

時に親をイラつかせ、わがままとも思わせるような子どもの集中力が、実は得意なことや好きなことを「誰にも負けない才能」のレベルにまで育てるためにはとても大切、というのが伊藤さんの持論です。

カギとなる「フロー状態」とは?

おもちゃに夢中になって遊んでいるとき、子どもは「フロー状態」に入っています。

フローとは聞きなれない言葉ですが、もともとは心理学者のミハイ・チクセントミハイにより提唱された言葉で、「完全にのめり込んでいる状態」という意味だそう。

子どもが本当に集中している姿を思い浮かべてください。呼んでも聞こえない、目は一点に集中している、よだれがしたたり落ちても気づかない、口をとがらせて作業に没頭している、などなど。

これらはまさに「フロー状態」に没入している姿なのです。

大人になると、ここまでのフロー状態を経験することは少なくなります。

まず人目があるとどう思われているか気になってしまったり、ひとりでいても時間ややることに気を取られたりしてしまうからでしょう。

伊藤さんは言います。

「実は、子どもが自分の持っている才能を存分に引き出すためには、乳幼児期にどれだけこのようなフロー状態を経験できるかが重要になります」

子どものフロー状態を邪魔していない?

赤ちゃんがおもちゃで遊んでいる時、フロー状態に入ることで、その遊びを満足しきるまですることができます。その結果、脳の神経細胞もたくさんつながっていくのです。

フロー状態を何度も繰り返すことで、そうした経験はやりきったという自信、つまり成功体験となり、将来新しいことに挑戦する力となって蓄えられていきます。

ところが、子どもがフロー状態の真っ只中にいる時に、親が遊びをやめさせたり、声をかけたりしてしまったら、どうでしょうか。

たとえ、ほめ言葉であったとしても、子どものフロー状態は途切れてしまい、遊びを満喫することはできません。その結果、満足感を得られず、集中力もつきません。

赤ちゃんの頃からフロー状態を十分に体験してきた子どもは、試験前などにすごい集中力を発揮して成果を出すことができるそうですが、それも、乳幼児期の親の子どもへの接し方がカギを握っているということになります。

さらに、豊富なフロー状態の経験がもたらす副産物に、スポーツや音楽など新しいことを始めるときも、他の子どもより覚えが早く、一定レベルの結果を出すことがあるといいます。ここぞという時に集中できる子どもに育つのですね。

親の責任は重大です。子どもがフロー状態に陥っていたら、できる限り、そっと見守っておいてあげたいですね。