ティーン世代の胸に響くに違いない『幕が上がる』『花とアリス殺人事件』
早春の注目作として話題を集めている『幕が上がる』(2月28日より全国公開)と『花とアリス殺人事件』(2月20日より新宿バルト9ほか全国公開)は、小学校の高学年以上のティーンにぴったりの作品といっていい。
ももいろクローバーZの5人のメンバーが主演を務める『幕が上がる』は、世界的劇作家、平田オリザが2012年に発表した同名小説の映画化。小さな地方都市の高校を舞台に、弱小演劇部のメンバーが全国大会を目指す姿が描かれる。ときに歩調が乱れながらも、最後は目標に向かって一致団結して舞台に打ち込む女子高生たちの姿はまばゆいばかり。すばらしい師との出会い、ぶつかって初めて生まれる友情、子供と大人の狭間への戸惑いと不安といった思春期に直面する普遍的な局面を収めたドラマは、きっといままさに学園生活を送る学生たちの心に響くはずだ。親世代は自分の苦く蒼い青春時代の記憶がよみがえるだろう。
一方、岩井俊二監督初の長編アニメーションとなる『花とアリス殺人事件』は、いまも若い世代に支持される2004年の『花とアリス』の前日譚。石ノ森学園中学校へと転校してきた有栖川徹子ことアリスと、家にひきこもっていた同級生の荒井花の出会い描かれる。
ウソかほんとうか定かでない噂話、それに動揺するクラスメイト、クラス内に置いての人間関係のパワーバランスなど、大人になるとどうでもいいことながら高校生にとってはすべてといっていい学園の時間を主軸にしたドラマは、ティーン世代がいままさに学校でリアルに体感しているものかもしれない。
また、のちに無二の親友となる花とアリスのファースト・コンタクトから時間を共有するまでの過程は、いつ、どこであるかわからない出会いのすばらしさを教えてくれる。それから、約10年前、『花とアリス』をリアルタイムでみた、いまはもしかしたら子をもつ親になった人たちは、あの花とアリスと再会を果たすことになる。そのとき、それぞれの心に何かが甦ることだろう。