東京の下町・根津に店をかまえる「根津・松本」。
この魚屋には、普通の魚屋ではまずお目にかかれない“超”高級魚だけが売られている。しかもそれが、開店と同時に飛ぶように売れていくという。

そんな“日本一の魚屋”が選ぶ“世界一旨い魚”を紹介した本が、『日本一の魚屋「根津・松本」に選ばれたこの世でいちばん旨い魚』(早川光著/松本秀樹協力)。

30年間、全国の魚を食べ歩いてきた著者・早川氏によれば、その魚のレベルは「数ある銀座の寿司屋を超えるレベル」だという。
そんな魚を実際に食べられると聞きつけ、試食会に参加した。

出会ったときから…

早川さんが「根津・松本」の店主、松本秀樹さんに出会ったのは約20年前。
都内にあるデパ地下の鮮魚売り場で松本さんが店長をしていたとき、早川さんがたまたま客として訪れた。

「若くて背の高いやつがいて、話を聞いたらすごく魚に詳しくてびっくりした。すでに寿司の食べ歩きを始めていたし、ある程度魚のことは知っていたが、そんな自分より全然詳しかった」

その後、松本さんは根津に店を開く。その店に初めて訪れた早川さんは、商品を見て驚いたという。すごいレベルの魚を揃えていたからだ。

「銀座とかならまだわかるが、なんで『根津』でやるんだろうと。商売として続けるには実際、難しいだろうと思えた」

たしかに大変な時期はあった。マグロひと切れ1000円。誰も買わない。そのあたりの話はNHK『プロフェッショナル 仕事の流儀』でご覧になった方もいるだろう。
しかし徐々に名前が知られるようになり、今では客が列をなして詰めかけ、目ぼしい魚は午前中に売り切れてしまう。
 

暗黙のルールに挑んだ、初めての魚屋

松本さんがすごいのは、仕入れの常識に割って入ったことだという。

(左)早川光氏、(右)「根津・松本」店主 松本秀樹氏

「通常、上物中の上物といわれる魚はみんな、銀座の超高級寿司屋や高級料亭に流れてしまう。業者は毎回コンスタントに買ってくれるところに売りたいから、普通の魚屋には売ってくれない。でも、松本さんはそれを横取りしてしまった(笑)」

それは雇われ店長時代の、松本さんの悔しい経験から来ているという。
欲しい魚があるのに、「もう行き先が決まっているから、売れない」と断わられ、いくら欲しくても買えなかったのだ。

「負けず嫌いなんです(笑)。いい魚が全部、お寿司屋さんに行ってしまうのが気に入らなかった。だからその流れを変えたかった」
 

「うまい肉」更新情報が受け取れます