名越:その話のためには、少しさかのぼって説明することになるんですが、10~20年くらい前まで日本のゲームって世界一だったんですよ。

だけど、今は欧米のランキングに日本のゲームは一本も入っていない。当時はたまたまファミコンなんかが世界的にヒットしましたが、ハリウッド的な大型投資で作る手法をやられると、いつか抜かれるというのはわかっていたことです。

それでどうなったかというと、日本人なのに外国人のふりをして作品を作らないといけないという風潮がゲーム業界にできたんですね。行ったこともない外国の町を舞台にして、外国人を主人公にする。どこかのフォーマットと同じことをやって、しかも売れない。何をやってるんだって思いました。

それなら自分は核のあるものを作りたいなと。日本を舞台に、大人の男だけをターゲットに勝負したくなったんです。

園:なるほど。先ほどPVも見せていただいたんですが、歌舞伎町……ゲームだと神室町ですけど、リアルですよね。店内の描写で、ここ実際に見たことあるぞってシーンもありました。実際、歌舞伎町でかなり遊んでいたんですか?

名越:歌舞伎町ではよく遊んでいましたね。

ゲームの舞台は1988年で、ちょうど僕も上京してきたくらいでした。まだキャバクラじゃなくてキャバレーでしたね。女の子も普通の人がいなくて、年齢を聞いたらそろそろ50の大台だったり、実は男だったり(笑)。

でも未だにそういうお店が歌舞伎町にはあるんですよね。園監督にとって歌舞伎町はどんな場所ですか?
 

新宿スワン」5月30日公開 ©2015「新宿スワン」製作委員会
  

園:昨年、歌舞伎町を舞台にした「新宿スワン」という映画を撮ったんですよ。そのときに僕も遊ばないといかんなと思って通いましたから、けっこう楽しい場所っていう感覚ですね。

ゲームの舞台になっている80年代の歌舞伎町って、一番すごかった時代じゃないかな。それこそ、欲望が渦巻いていた。

 

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