名越:ただゲームの方も閉塞感はありますよ。

というのも、ファミコン時代から続いているタイトルって今でも続いているんですね。さすがにもういいよって思ったりすることもあります。そういう状況の中で「龍が如く」は得をしているタイトルなんですよね。

最初に声の出演として渡哲也さんを起用したりして、かなり引きもよかったし、さらにその上でしっかりお金をかけていいものを作ったので、そのギャップでも評価が上がったところがあります。そうやってファンの方の熱が生まれて、実はそれが10年経った今も残り香としてあるんですよね。だから今でもシリーズタイトルを出せているところがあります。

不思議なのは誰も追従してこないことです。「龍が如く」しかない。だからファンも次が見たいと言ってくれているんだと思います。「龍が如く」って毎回同じ舞台ですし、ある種、こち亀であり寅さんなんですよね(笑)。

 

暴力とセックスは面白い。なぜなら普段やらないものだから

園:そろそろ今日の本題なんですが、「表現としての暴力とエロ」っていうテーマをいただいたこと自体が、僕としては近未来に生きているんだなぁって感覚なんですよ。

だって、小さい頃のTVなんて、21時くらいからおっぱいが出始めて、22時からはドラマでセックスして、23時からはもうめちゃくちゃでしょ(笑)。
 

  

そこから自主規制が重なって、僕の周りもどんどん暴力とエロをやめて寂しくなってきている。僕は別に暴力とエロが大好きでたまらないってわけじゃなくて、ただそれらを描くことは自由に表現することなんですよね。

単に周りがやめちゃったから目立つだけ。僕からすれば普通ですって感じ。むしろ今の若い日本映画作家なんかは、縁側でみかんを剥いて「空が青いね」みたいなものを撮ってるけど、それでよくむずむずしないなって思う(笑)。

名越:映画でもゲームでもそうですが、よく暴力表現やエロは子どもに悪影響が……なんて言われますよね。

園:僕は本物の血は苦手なんですが、映画で血を見るのは面白いと思う。創作物で見たからって、じゃあ現実でやるかって言ったらやらない。映画を見ていた子ども心にもそれはわかっていましたし、問題視するようなものじゃないですよ。

名越:ゲームの場合はまた独特な言われ方をするんですよね。あの殺人犯はこのゲームをやっていましたって。ゲームは未だに不可思議なものとして扱われることが多いし、そうしておいたほうがゲームのせいにしやすいんでしょうね。ゲーム脳なんて未だに言われたりもしますし。本当の暴力表現って、心が荒らされるような気持ちになるものだと思うんですよ。暴力シーンは暴力シーンでしかないですから。

園:暴力とセックスって面白いんですよね。それはなぜかっていうと、普段はやらないものだから。だからこそ面白いし、ゲームや映画から暴力やエロの表現が完全に抜かれたら、それこそ僕はイライラして暴力に走っちゃうかも(笑)。そういう意味で、僕は毒抜きだと思っています。

 

これから作りたいもの。惹かれる題材について

園:話は変わりますが、「龍が如く」ってやっぱりキャバクラで遊んで取材して作ったんですか? 今でも遊びに行ったりします?

名越:もちろんです(笑)。今でも歓楽街で遊びますよ。歌舞伎町だけじゃなく、銀座や六本木も。あ、でも歌舞伎町は顔バレしてるから、あまり行かなくなりましたね。うちの店もゲームに出してくれとか言われますから(笑)。

園:だからゲームがすごくリアルなんですね。

名越:リアルといえば園監督の作品も現実の事件をモチーフにしたものがありますよね。感心するのは、そのスピードがすごく速いなってことです。「希望の国」とかもそうでしたね。

園:うーん、だけど、作っているうちに現実に追い越されそうだなって思ってますよ(笑)。

名越:たしかにすごいスピードで価値観が変わっていますよね。

たとえば僕はTwitterやFacebookはやらないんです。皆でつながりあって拘束され合うのって、窮屈じゃないのかなって思ってしまう。でも今は皆つながりたがりますよね。

価値観が変わってきていて、ヘタすると「おいしい」とか「悲しい」みたいな感情の基準までズレ始めている気もする。今まではそれって世代の違いがそうさせていたのかなって思っていたのですが、最近は技術がそうさせているんじゃないかって思うんですよ。昨日までそうじゃなかったのにっていう。それって怖い話ですよね。とてつもなく悪い方向に進んでしまったら国がひっくり返るくらいのことになりそうな気もします。

結局のところ、そういうものを僕らは受け入れるしかないんだけど、そうなっているっていう意識は持っていたいし、皆にも持っているかい? って聞いてみたい。警鐘を鳴らすってわけでもないけど、自分が作るもので、そういうテーマを取り上げてみたいですね。園監督はこれから取り上げたいテーマはありますか?

園:僕は未来がどうなるのかっていうことに興味がありますね。「龍が如く0 誓いの場所」も80年代が舞台ですけど、今とぜんぜん違いますよね。じゃあ今から20年後はどうなっているのか。それを想像しながら作ってみたいと思っています。

 ゲームと映画。フィールドは違えども、表現者として共感しあっていた名越氏と園監督。二人が今後、どんな作品を世に送り出してくれるのか楽しみだ。
 

やまだい・ゆうき 映画、漫画、ゲームなどエンターテインメント関連の記事を中心に執筆するフリーライター。飲料では特にコーヒーとカフェオレをこよなく愛しており、これまでに数百もの缶コーヒーの感想を記録している。ブログ

「ウレぴあ総研」更新情報が受け取れます