歌舞伎町の魅力
名越:そうですね。僕が18で田舎から上京したとき、東京で遊びに行こうって思って最初に行ったのが東京駅だったんですよ。だって「東京」じゃん! って(笑)。だけど、日曜の丸の内なんて誰もいない。
園:わかる! 僕も東京駅に行きましたよ(笑)。
名越:それである時、某カメラ屋さんのテレビCMを見て、東京って丸いんだ!と。
山手線の駅をぜんぶ回れば東京がわかるはずだって思ったんですね。で、東京駅から徐々に南下していって、グルっと行って新宿駅で歌舞伎町を見たときに「ここだ! 俺の知ってる東京はこれだ!」って確信したんです(笑)。
山手線めぐりはそこでゴールを迎えて、少ししてから歌舞伎町で働くようになりました。毎日松屋の牛丼を食ってましたね(笑)。
園:今はなき香港の九龍城に近い輝きを持っているのかなって思いますね。
外国人の思う日本的なダークファンタジーが存在する町が歌舞伎町なのかも。
聞いた話なんですが、外国人が新宿のホテルに泊まって、フロントでこう聞いたらしいんですよ。「ニンジャがどこにいるか教えてください」って(笑)。当然、フロントは「ニンジャなんていませんよ」って答えるんですけど、そうしたらその外国人は「わかってる! そういうふうに言わないといけないのはわかってるけど、そこを何とか教えてよ!」って(笑)。
名越:(笑)。
園:ゲームの話に戻りますけど、「龍が如く」の中では、そんな歌舞伎町ならぬ神室町で暴れることができるんでしたっけ?
セーラー服のラインの数でエロいかどうかが決まる
名越:「龍が如く」では相手からケンカをふっかけられないと自分からは殴れませんね。それから子どもが死ぬシーンもありません。そこは明確に貫いている部分です。
園:それってやっぱりモラル的なところで?
名越:二つ理由があって、ひとつは僕もそれはやりたくないってこと。それから、いろいろ周りからうるさく言われるからっていうのもありますね(笑)。ただ、ゲームの場合は暴力よりエロの方がうるさいかな。テレビCMを打つときは毎回大変です。
園:僕もいつも怒られていますよ(笑)。同じ戦いが繰り広げられているんですね。
名越:話し合えば何とかなる場合もあるんですけどね。文書で言われてもわからないですよ。「◯◯を想起せしめる表現」とか言われて。“せしめた”覚えはないんだけどって(笑)。
「龍が如く」では最初、ピンク色にフェードアウトするだけで怒られました。その表現がセックスを想起させるっていうんですよ。それはあなたの感覚でしょって(笑)。
園:映倫と同じですね。僕の場合は、セーラー服のラインが二本だとエロくて、一本ならエロくないからセーフって言われたことがあります。それはあなたの勝手な趣味じゃないか!(笑)
名越:(笑)。ただ、そのとき担当してくれた人による部分はありますね。
園:映画もそう。ゆるい人がついてくれるとゆるかったりしますね。最近だと「地獄でなぜ悪い」っていう映画を撮ったのですが、あれはPG12なので小学生が見てもいいことになってるんです。いいの? って(笑)。
名越:「地獄でなぜ悪い」は僕の中で園監督作品ナンバーワンです。星野源君の歌をカラオケでフルで歌えるくらい何度も見ましたよ。
園:ありがとうございます。でも「龍が如く」も映像表現の点では映画的ですよね。
映像のクオリティもすごい。僕はゲームをプレイしていて、最近はなんで自分は映画やってるんだろうって思うこともあります。ゲームと映画の境界線は消えていっている気がしますね。
僕もゲームを作ってみたいですよ。日本映画なんて、ろくなストーリーがないし、面白いものがない。予告編を見ただけで、もう絶対に「龍が如く」の方が面白いって思います。今、映画をやる必然性ってどんどんなくなっていますから。日本映画は僕から言わせると沈没しています。