「レースから量産車に技術をフィードバックするだけでなく、あえて信頼性の高い量産部品を使って勝つのが、車の本当の実力をはかるのにちょうどいい」
昨年6月、ニュルブルクリンク24時間耐久戦に挑む直前の、STI(※SUBARU TECNICA INTERNATIONAL)総監督・辰巳英治氏が富士スピードウェイでの取材で語ったセリフをいま、思い出す。
あれから9ヵ月。2015年3月22日、スバル スター スクエアで開催された『SUBARU 2015 モータースポーツファンミーティング』にて、2015東京オートサロンで発表されたSUBARU2015レース新体制(GT300/ニュルブルクリンク/全日本ラリー/86)のメンバーが一堂に会し、戦場に挑む意気込みを語るトークセッションが行われた。
会場にはSUBARUファンのみならず、家族連れも多く、SUBARUというメーカーが一部のコアなファンのみならず、一般大衆に広く知られていることを実感させられる。そして会場に展示された実際に参戦するレース車の存在が、SUBARUの走りに対する戦いがまさしくこれから繰り広げられるのだという雰囲気を、いやが上にも高めてくれるのだ。
これらトークセッションの様子はUstreamやニコニコ生放送でも放映され、SUBARUのレース報道に対するユーザーフレンドリーな精神は、他のメーカーより一段先を行っているといえるだろう。
GT300は8戦4勝を目指す!
トークセッションはGT300についてからスタート。実際にドライバーとして参戦する井口卓人選手と今年からチームに加わった山内英輝選手がマイクを片手に、SUBARU BRZを武器として参戦するGT300について語ってくれた。
まず、「今年のBRZはここが速くなっている」という点について、昨年から参戦している井口選手は「タイヤがミシュランからダンロップに変わったことで、その合わせこみに苦労している面はあるが、決勝のロングランに関してはタイムが落ちない、タイヤのタレ(劣化)が少ないという点は、かなりの強みになりますね」と語った。
一方、東京オートサロンで辰巳総監督が「速いから引き抜いた」とその実力を高く評価した山内選手は、「今年からBRZに乗りましたが、コーナーインの速度がすごい高いので、恐怖感を感じるくらいでしたね。でも(BRZは)コーナリングなので、そこは安定して走って行ける。タイヤもすごくいいし、手応えを感じますね」と、BRZの実力を高く評価した。
最大のライバルは誰か、と聞かれた井口選手は、去年同じGT300チームメンバーとしてハンドルを握り、隣に座っている佐々木孝太選手(昨年に引き続き、SUBARUドライバーとしてニュルブルクリンクに参戦)の方をニヤリと見つめた。
見つめられた佐々木選手は苦笑しながら「本当はね、BRZに乗りたかったんですよ……。でも某T社のPリウスに乗ることになってね。でもおじさんも若者には負けないぞってね」と語ると、会場から笑いがおこった。
今年の目標は全8戦中3勝と辰巳総監督が語ったことについて、勝ちを取りにいくポイントを聞かれた山内選手は「岡山(岡山国際サーキット)、SUGO(スポーツランドSUGO)、オートポリス、鈴鹿(鈴鹿サーキット)」と激しく意気込んだところ、すぐに全員から、「それじゃ4勝じゃないですか!」と突っ込まれ、またまた会場は笑いモードに。いやいや楽しいトークセッションである。
しかし辰巳総監督からは「4勝というのも根拠のない話ではなくて、トップの車から1秒のタイムのコンディションに仕上がっているから、いけるのではないかと手応えは感じてますね」とのコメントが飛び出した。
富士(富士スピードウェイ)はどうか? と聞かれると、「去年はミシュランタイヤの力と、雨という天候も作用して勝ってしまったというか……。やはり20km/h以上もの排気量の違いから、直線の最高速は他に負けるね。やはりコーナリングのSUBARUかなあと。
でも昨日連絡があったんだけど、規定(レースレギュレーション)も少しターボ車有利になったことはまさしく吉報。やれるかもね」と語った。GT300はインターネット中継もされるので、楽しみである。
GT300のシートを若手にゆずった佐々木選手は、「今年は別のメーカーに乗るけど、SUBARUの車は、ずっとみんなで造り上げてきたからね。勝って欲しいよね。SUBARUの強さを見て欲しい」と語った。