サイレント・ベビーとは読んで字のごとく“静かな赤ちゃん”。赤ちゃんにも個性があるので、元気に騒ぐ子や比較的おとなしい子もいますが、親の無関心により無反応になっているのはよくないかもしれません。
『発達障害に生まれて-自閉症児と母の17年』の立石美津子がお話しします。
サイレント・ベビーとは
サイレント・ベビーとは医学用語ではなく俗称です。“必要な世話を十分にされていないなどの理由で、笑わない、目を合わせないなどの特徴を持った赤ちゃん”を指します。
小児科医の柳澤慧氏が述べた言葉です。
表情が乏しく、発語も少ない静かな赤ちゃんを私は「サイレント・ベビー」と名づけましたが、このサイレント・ベビーという言葉は、医学用語でも育児用語でもありません。(中略)育児の上での環境、とりわけお母さんとのかかわりあいが、大きく影響します。
例えば
- お腹が空いたり、おむつが濡れたりしていても泣かない
- あやしても笑ったり嫌がったりしない、など反応に乏しい
- 動作が少なく、じっとしていることが多い
- 喜怒哀楽の表現がなく、全体的に表情が乏しい
- 人の目をあまり見ず、視線を合わせない
- 長時間周囲に人がいなくても、不安がらずじっとしている
けれども、人は身体つきや顔つきが一人として同じ人はいないように、赤ちゃんの性格も様々です。活発な子もいればおとなしい子もいます。
また十分世話をして愛情一杯かけていても、自閉症などの発達障害であれば反応が乏しかったり、親を追わない場合もあります。ですから、「反応の薄い子だから、将来問題行動を起こす」という根拠はありません。
ですから、いくつか当てはまったからと言って、早急に「うちの子はサイレント・ベビーだ!」と安易に決めつけて、不安になったり焦ったりすることはないと思います。
ヒトの子はみんな早産
人間の子どもは無防備な状態で生まれてきます。ライオンやキリンなど動物の子どもは生後間もなく立つことができ、早く成長します。それに比べてヒトの子は平均値ですが、生後1年で立つこと、そして歩くことが出来るようになります。
これをスイスの生物学者のポルトマンが “生理的早産”と呼んでいます。世話をしてやらないと生きてはいけないのが人間です。
サイレント・ベビーの誕生
さて、母親の胎内から出た瞬間、この世に無防備な状態のまま放り出される子ども。そんな時、赤ちゃんは自分が不快な状態であることを自ら取り除くことは出来ないので、周りに次のような行動をして訴えます。
- お腹が空いたら泣く
- オムツが濡れたら泣く
- 眠くてもすんなり寝られないと泣く
- 暑いときも寒いときも泣く
- 痛い、辛い、だるいなど体調が悪ければ泣く
そうしてギャーギャー泣くと、親が「よし、よしおっぱいあげようね」などと世話をしてくれます。そんな体験を通して「外界へ積極的に働きかけたら、自分の不快感を取り除いてもらえる、助けてもらえる」ことを次第に学習していきます。
ところが、「お腹が空いた」「おむつが濡れている」とどんなに泣き叫んでも、無視されることが続くと、反応しなくなってしまうことがあるようです。