そしてホテルニューグランドには、池波氏が愛した味がもうひとつある。それはバー「シーガーディアン」のドライ・マティーニだ。シーガーディアンは1991(平成3)年に場所が移動し、店名も「シーガーディアンII(ツー)」に変わったが、カクテルは当時と同じものを提供しているとのことであった。

シーガーディアンIIの店内 (今回は撮影用に店内を明るくしてもらったが、通常はもっと照明を落とし、BGMにジャズが流れているとのことであった。)
テーブル席
カウンターの奥に並ぶお酒の数々

シーガーディアンIIでは前述の和田さんと、チーフバーテンダーの太田圭介(おおた・けいすけ)さんからお話を伺った。

チーフバーテンダー、太田圭介さん

太田さんに、池波氏が飲んだドライ・マティーニを作っていただいた。その華麗な手さばきは、まるで芸術作品を見ているようであった。

材料はドライ・ジンとドライ・ベルモット
グラスを用意
水と氷でミキシンググラスを冷やし
水を捨て、ドライ・ジンとドライ・ベルモットを注ぐ
しっかりとステアして
グラスに注ぎ
オリーブを飾り、レモンピールを振りかけてドライ・マティーニ(1200円)が完成

一見何の変哲もないように見えるが、グラスはドライ・マティーニが一番美しく見えるようにカットを入れたものを使い、オリーブの向きは赤い色が見えるほうが正面、刺しているカクテルピンの向きはお客様が右利きなら右、左利きなら左に置くと決められているそうだ。細部にまでこだわっているのだ。

いただいてみると、ドライ・マティーニはとても強いカクテルのはずなのに、飲みにくさを全く感じない。美味しいドリンクを飲んでいるかのようにすいすいと喉を通っていった。

絶品のドライ・マティーニに見とれる筆者