そして今回は、ドライ・マティーニに最適のおつまみも用意してもらった。「アンチョビ・オン・トースト」という、バターを塗ったトーストの上にアンチョビを乗せたものだ。ドライ・マティーニを飲む方には必ずお勧めしているというので、池波氏もおそらく食べていただろう、とのことであった。
こちらはアンチョビの塩気が効いていて、すっきりとしたドライ・マティーニに非常によく合う。カクテルの味を知り尽くしたシーガーディアンならではの、本当に素晴らしい組み合わせだった。
池波氏が来店していた当時の思い出を伺ったところ、太田さんが珍しいものを出してきてくれた。それは、開業当時から使われているダイスとカップだった。
以前はこのダイスとカップを使って「上海ダイス」という遊びをするのが流行しており、多くの著名人がシーガーディアンのカウンターでカップを振ったそうだ。「池波さんも多分このカップを振り、どんな目が出るかを楽しんでいたのでしょう」と太田さんは話していた。
最後に太田さんにも、ホテルニューグランドでの仕事にかける思いを伺ってみた。太田さんは「長年作り続けられてきたスタンダードカクテルをおいしく作れるのが、ニューグランドのバーテンダーだと思います。ブームに振り回されることなく、歴史を大切にして、自分が先輩たちから受け継いできたものを後輩にきちんと引き継いでいきたいです」と話していた。
先の長谷さんの話と非常によく似ている。従業員全員が歴史を大切にし、常に最高のものをお客様に提供しようとするホテルニューグランドの心意気に、池波氏は惚れ込んだのだろう。
取材を終えて
取材したいずれの店にも共通していることがあった。それは「変わらない」ことだ。社会が変わり、経済が変わり、流行が変わっても、積み上げてきた歴史を大切にし、愛されてきた味を変えることなく提供し続ける。これは本当に一流の店にしかできないことだ。今回は一流の作家が愛した一流の味を取材させてもらい、本当の一流とは何かを学ばせてもらった。こんな素晴らしい機会を与えてもらったことに心から感謝したい。
蓬莱閣
住所:横浜市中区山下町189
電話番号:045-681-5514
営業時間:平日11:00~15:00、17:00~21:00
土日祝日11:00~21:00
定休日:水曜日
ホテルニューグランド
住所:横浜市中区山下町10番地
電話番号:045-681-1841(代表)
営業時間:ザ・カフェ:10:00~21:30(LO21:00)
シーガーディアンII:17:00~23:00(LO22:30)
定休日:ザ・カフェ、シーガーディアンIIともに無休
※飲食代のほかに10%のサービス料がかかります
※本記事は2015年2月の「はまれぽ」記事を再掲載したものです。