1組目は会社員のカップル、じゅんきさんとひとみさん。

じゅんき「鈴木に共感しました。仕事が忙しくて彼女になかなか会えないところとか、焦ってイライラするところは分かる、分かると思った。浮気した時のごまかし方も反面教師的に勉強になりましたね。観終った後、いろいろ話して盛り上がれるからカップルで観てもいいかも。僕らは特に気まずくはならないと思う(笑)」(満足度:93点)

ひとみ「私がマユでも同じようにしちゃうかな?って共感するところもあった。でも、私は●●はしないです」(満足度:85点)

このカップルの場合はすでに揺るぎのない部分があるから、映画の恋のエピソードを一歩引いた視点で楽しめたようで、ともに満足度も高得点だ。
 

  

続いて2組目は二十歳同士の大学生のカップル、ゆうきさんとさやかさん。

ゆうき「最後はちょっと萎えてしまったけど、まだこんな恋愛をしたことがないから憧れてしまうところもある。女性の顔のアップが多いからキュンとしたし、見つめられているような感じがしてドキドキしました」(満足度:88点)

さやか「私は未だにピュアな恋愛経験がないので、ドキドキしてときめきました。特に彼に強く言われたとき、優しくしてくれた人に気持ちが傾くマユには共感できましたね」(満足度:85点)

このふたりには、本作は憧れの恋愛を提供できたようで、こちらもいずれも満足度は高得点。ふたりで映画の内容や知らなかった異性の思いなどについて話し合ったに違いない。
 

  

そして3組目はさらに若い18歳同士の大学生のカップル、順平さんと萌音さん。

順平「僕たちは大学が違って、鈴木とマユの遠距離恋愛となんとなく似ているところもあるから、観ている途中で気まずくなるかな? とも思ったけど、大丈夫だった。でも、一緒に観たら気まずくなるカップルもいるかもしれない」

萌音「女性から見るとマユはあざといかも。友だちにいたら敬遠してしまう感じの子。自分はマユみたいに器用ではないから、彼女のようにはできない。マユのように彼氏に通ってもらう立場に甘えていると、浮気されてしまうかもしれないというのが教訓になりました」

この若いカップルは完全にそれぞれ男性、女性それぞれ一方の視点からの感想だったが、ともに満足度は100点満点のどストライクだったのが興味深い。

この3組のカップルのコメントからも分かるように、『イニシエーション・ラブ』は、年齢や恋愛の経験の数、男女それぞれによっても感想が変わるところが面白い。

ちなみに、タイトルの「イニシエーション」とは「通過儀礼」という意味。3組のカップルのコメントにも映画の“秘密”を解くヒントが隠された本作を観て、自分たちの恋を見つめ直してみるのもいいかもしれない。
 

映画ライター。独自の輝きを放つ新進の女優と新しい才能を発見することに至福の喜びを感じている。キネマ旬報、日本映画magazine、T.東京ウォーカーなどで執筆。休みの日は温泉(特に秘湯)や銭湯、安くて美味しいレストラン、酒場を求めて旅に出ることが多い。店主やシェフと話すのも最近は楽しみ。