圧倒的に不利だけど決して挫けない片思い/『さんかれあ』の左王子蘭子
"幼馴染"……それは、ラブコメのアニメ作品において、非常に不利なポジションにある存在です。
というのが、大抵のラブコメ作品の場合、男性主人公には彼に対して好意を抱く幼馴染の女の娘がいるのですが、多くの場合、そんな彼女たちの前に転校生だったり、人気アイドルだったり、異星人だったり、未来人だったり、神様だったり、妖怪だったり……とにかくスペシャルなステータスを持った"メインヒロイン"が現れて、昔から主人公の側にいたハズの幼馴染さんは、"サブヒロイン"のポジションに追いやられてしまうものなのです。
"メインヒロイン"とか"サブヒロイン"とか、何だか彼女たちの恋心を定型的で狭いキャラクター造型に押し込めているようで、自分自身イヤ~な感じですが、とはいえ、私の好きな『GIRLSブラボー』とか『おまもりひまり』とか『のうりん』とか、全部そうでしたよ! 全部そうでしたよ!!(熱がこもり過ぎて2回言った)
哀しいことに、"いきなり現れた超絶ステータスの持ち主であるメインヒロインに対して苦戦を強いられる幼馴染"というのは、ラブコメ作品のあるあるなのです。
とはいえ、中にはそうした悲劇的な運命に負けず、自身の恋を貫き通す女の娘もいます。『さんかれあ』の左王子蘭子さんは、そんな"戦う幼馴染"とでも呼ぶべきヒロインのひとり。
『さんかれは』は、ゾンビになってしまった美少女、散華礼弥(さんかれあ)と彼女がゾンビになるきっかけを作ってしまった降谷千紘というふたりによる女の娘と男の子、ゾンビと人間のラブロマンスを描いた作品です。
ゾンビとはいえ、ホラー映画のようなグロテスクでスプラッターな見た目ではなく、生前の美少女然としたルックスと佇まいを残す礼弥。そんな彼女と、大のゾンビマニアである千紘は、様々な出来事を通して徐々にその距離を縮めていきます。
しかし、そんな千紘に幼い頃から好意を抱いていたのが蘭子さん。幼馴染で、しかも従兄弟同士という血縁関係の近さ故、完全に千紘からは恋愛の対象外とされ、最初から視界にすら入りません。その上、"美少女ゾンビ"という特殊パラメーターを持った恋のライバルまで現れるわけですから、これはもう大変です。
まさに、ヘレン・ケラーばりの二重苦三重苦。前途多難な恋をしている蘭子さんですが、そんな過酷過ぎる恋の障壁にも彼女は決して屈しません。
素直で優しい礼弥と女の娘同士の友情を育みつつも、恋愛に関しては同じ相手を好きになったライバルとして、その辺りの感情はストレートに表に出していきます。不利な片思いをしつつも、一方で凛とした強さも併せ持つ蘭子さんの姿からは、エモーションと共に、エネルギッシュなフィーリングも感じることができます。
そんな彼女の奮闘っぷりがフォーカスされる第7話<おさな…なじみ…(Run Ranko Run)>は片思いヒロインが好きな方なら必見の名エピソード! ゾンビ映画のオマージュや劇中に散りばめられた映画ネタの数々も、映画ファンならばニヤリとさせられる作品ですよ。