子どもの“ありたい心”を引き出すには?
子どもの“ありたい心”は、いったいどのように引き出したらいいのでしょうか?
植木先生は次のような方法を教えてくれました。
『憧れの人物』の存在から引き出す
子どもに「どうありたい?」と直接的に聞いても、ポカーンとするばかりでしょう。
どうありたいか?なんて、オトナでもなかなかすぐには答えられないものです。
そこで効果的なのが、子どもの『憧れの人物』から、“ありたい心”を引き出す方法です。
子どもは、物語のヒーローやキャラクター、あるいはスポーツ選手や有名人などに憧れを抱き、そこから「〇〇になりたい!」という夢や目標を持つことが多いです。
そこで、「その憧れの人物の、どういうところが好きなのか?」を尋ねることによって、“どうありたいか?”を訊き出すのです。
憧れのヒーローの「正々堂々と立ち向かうところが好き」という場合、その子は“正々堂々とありたい心”を持っていると言えます。
憧れの選手の「いつでも前向きなところ」という場合、その子は“いつでも前向きでありたい心”を持っていると言えます。
子どもがまだ小さい場合、絵本を読み聞かせているママも多いと思うのですが、絵本を読み聞かせた後、「〇〇ちゃんはどの人が好き?」と、好きな人物について尋ねてみるのも、“ありたい心”を引き出すのに効果的です。
子どもが好きな人物を答えたら、「どういうところが好きなの?」と尋ねます。
すると、子どもなりに考えていろいろ言ってくれるでしょう。
「どんなときでも優しいところ」といった場合、その子は“どんなときにも優しくありたい心”を持っているということが分かります。
昔の偉人などの話をドラマティックに語り、「その人物についてどう思う?」「どんなところが好き?」という会話からも、その子の“ありたい心”が見えてくるかもしれません。
一緒に映画を観に行って、映画の中の登場人物について親子であれこれ語り合うのもいいですね。
子どもの“ありたい心”をサポートするには?
次に、子どもの“ありたい心”をどのようにサポートしていけばいいのかについて、教えていただきました。
「できた・できない」だけでなく「どういう態度で臨んでいたか?」に目を向ける
子どもの“ありたい心”をサポートするためには、親は「できた・できない」だけに囚われた声かけをしないことが大切です。
・「ピアノで〇〇の曲が弾けるようになったね!すごいね」
・「スイミングの進級テスト、今回は不合格だったね。残念だね」
このように、目に見える結果にばかり焦点を当ててフィードバックをしていては、“ありたい心”は育まれません。
・「諦めずに最後までがんばっていてすてきだったよ!」
・「前向きに取り組めたね!」
・「手を抜かずにがんばれたね!」
このように、「どういうありかたで臨んでいたか?」にも注目して声をかけてあげましょう。
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“なりたい心”と“ありたい心”は、「人が一生をかけて意欲的に生きていくのに、どちらもなくてはならない車の両輪」と、植木先生は書かれています。
“なりたい心”を応援すると同時に、“ありたい心”をサポートする、2種類の声かけを意識してみてください。
【取材協力】植木 理恵(うえき りえ)
心理学者、臨床心理士。東京大学大学院教育学研究科教育心理学コース修了後、文部科学省特別研究員として心理学の実証的研究を行う。日本教育心理学会において最難関の「城戸奨励賞」「優秀論文賞」を史上最年少で連続受賞。現在、東京都内病院でカウンセリング、慶應義塾大学で講師をつとめる。また、「ホンマでっか⁉TV」にて心理評論家として人気を博す。
学術的研究にとどまらず、『本当にわかる心理学』(日本実業出版社)、『シロクマのことだけは考えるな!』(新潮社)など、一般向けに心理学を解説した著書多数。