「北村一輝さんの存在が、やっぱりあなごの安心感に繋がったと思います。
北村さんがちょっと気難しいツンデレな猫のことを好きになってくれたわけですけど、彼のその“好き”という気持ちがあなごにも通じたとしか思えないですね。
それこそ、最初のころは久太郎と玉之丞が向かい合って座るシーンですらできるかどうか心配だったけど、それがどんどん大丈夫になり、いまや一緒に食事をするまでになりましたから。この歳でこんなに変わるんだって、私たちがいちばんビックリしていますよ」
本作ではふたり(?)の心はすっかり通い合っているようで、久太郎が島でのサバイバルに疲れた玉之丞の前足を持って体操をさせる微笑ましいシーンも登場する。
「あれは、私が猫たちに普段やっていることなんです。
動物のツボは人間と本当に一緒なので、眉間の皮をつまんであげたり、手足を動かしてほぐしてあげたりするんですよ。
それを見ていた北村さんが“取り入れよう“”って言い出したんですけど、あれは思いきってやってもらった方が絵的に面白いし、猫も安心するんですよね。
ストレッチじゃないですけど、猫って気分転換するときに身体を伸ばしますよね。だから、知らない場所に行って縮こまっている猫には、ああいうマッサージやストレッチをやってあげるといいと思います」
猫はイヤなものはイヤ。あなごとジャックの相性は最悪だった
だが、いい出会いもあればその逆があるのも世の常。あなごの場合は奇しくも、劇中で玉之丞が恋におちるヤムヤム役の黒猫・ジャックがその最悪の相手だった。
「ジャックは『ねこばん』(10)にも出ているし、映画版の『くろねこルーシー』(12)では男の子なんですけど、お母さん役をやっていて、実はドラマの『昼顔』(14)でも北村さんと共演しているんです。
『昼顔』の現場でジャックのことを“この子、いい子だね~”って言っていたから、あのときに白猫と黒猫を共演させたら面白いのでは? というアイデアを思いつかれたのかもしれませんね。
でも、二匹の相性がとにかく最悪で。猫はイヤなものはイヤなんですよ。
特にあなごはほかの猫を受け入れないし、いろいろな猫と一緒に生活をしているジャックもなぜかあなごのことは好きじゃなくて……。
私はあなごから最初に手が出ると思っていたんですけど、ものの見事にジャックから手が出ましたね(笑)」
その、あまりにも一瞬の出来事には映画を観ているこちらも絶句する。