「女性・母親はこうあるべし」に縛られる日本のオンナたち

樋口:例えば、小さい子どもを連れている母親に席を譲ったという人がね、こんなツイートをしていたんですよ・・・

「子どもがいて大変だろうと思って席を譲ってやったのに、なんとその母親は礼を言った後、譲られた席でスマホを見てツイッターをやっていました。許せません!」

「そんな小さい子がいるならスマホなどやらずに、声をかけてあげたりするべきでしょう?」

「自分の子どもにおっぱいをあげながら、ネットでスマホをやっているヤツも許せませんよね、あんなの母親失格です。ちゃんと赤ん坊の目を見ながらあげるべきです!」

・・・前の『おっぱいがほしい!』にも書きましたけどね、苦労すればするほど「いい!」と思ってんの!

恐怖というか、過剰なまでの“母性信仰”ですよね。

母たるもの、すべてを犠牲にして子に捧げろ?24時間ずーっと一緒にいろ?

保育園に子どもを預けるだけでどうのこうの言う人がいるワケでしょう?本当にどうかしてる。

どんなに相手のことが大好きでも、1日24時間ずーっとその人といたりするとさすがに疲れちゃうから、1日数時間でもひとりきりの時間が欲しいっていうのは、当然のことですよね?

それが彼氏だったら、同性愛者だったら彼女ということもあるでしょうけど「ずっと一緒にいると息が詰まるんだよね~」ってこぼせば、みんな「それはもっともだ」って言ってくれるのに、そこを“赤ちゃん”や“子ども”に置き換えると、もう「許せない!」という人たちがいるんですよね。

これじゃ、ママは苦労しますよ・・・僕は男性なんで、そういう意味では“イクメン”なんていわれて、下駄を履かせてもらえますけどね。

妻とも時々話すんですけどね、日本はね、世界の中で、男女平等ランキング114位なんだそうですよ。

例えば、男で年収700万円とかの生活を、30代40代50代でね、子どもがいながら築いていくことは、ある程度できると思うんです。でも、女性はまずできないでしょう?

女性が700万の生活を維持していこうと思ったら、子どもを産む時間ないんだもん。

もちろん、例外はある、一流の会社で、ちゃんと産休の制度があったりしてね。でもやっぱり、例外の部類だと思う。

いまだに、妊娠したら辞めざるを得ない、もしくは閑職に追い込まれる。これが、男女平等ランキング114位の、日本の現実なんですよ。

悲惨なのは「日本は男女平等ランキングで114位なんだよ、ロシアや中国、インドよりも下なんだよ」って聞かされても「えー、なんで?そうなの?」って思う方が、大半なんじゃないかということ。

現実に気付いていない、気付かされていない。現状が余りにも“当たり前”と思っちゃってる。

それなのに働くお母さんたちは「普段一緒にいてあげられていないんだから、土日は遊んであげなくちゃ!」と、もっともっと自分を追い込んでゆくでしょう?

ワーキングママに限らず専業主婦でもそうだと思いますけど、総菜を買う時に、ちょっとした罪悪感がないですか。

「レトルトだけど、国産のヤツだから」

とか、言い訳を探していませんか。

「ママはこうあるべし!」の呪縛に、がんじがらめになってますよ。手を抜けるところは抜いていいんですから。

――『東京パパ友ラブストーリー』にも、専業主婦×働くパパ、タレント議員×兼業主夫、バリキャリ×専業主夫、等いろんなタイプのファミリーが出てきます。

表面的にはどの家庭もうまくいっているように見えるのですが、たしかに誰も彼もが「女とは」「男とは」「夫婦とは」「家族とは」の常識に“がんじがらめ”になって、もがいているように見えますね・・・

樋口:育ってきた家庭環境とか、躾とかもあると思うんですけど、本人の持って生まれた資質もメチャメチャ大きいと思っていて。

で、個人を取り巻く“社会”ということでいえば、ちょっとずつ良くなってきているところはあるし、変えてゆけるんじゃないかな、と希望も持っているんですよ。