古い価値観を子どもに手渡すことはない!家族も社会も日々変わってゆくもの

樋口:毎朝、保育園の送り迎えに行ってますけど、男性も多いですよ。スーツ着てね、これから出社なんだろうなっていう方がたくさんいる。交互でいらしているご家庭もありますね。

土日は息子を公園に連れて行ってますけど、ご家族で来られている方もいるし、パパと小さい子でというのも、見ない日はありません。

「育児=ママ」ではなくなってきている、というところは、本当に良くなったと思いますね。

あとは男性用トイレでも、オムツ替えができるスペースがもっと増えてくれたらいいんですけどね。便座の蓋の上で立ったまんま替えるとか、ほんっとに多いので。個室が埋まっていたりするとね、トイレの片隅でモゾモゾやってますよ。

もちろん小さなレストランとかであれば仕方がないんですけど、デパートだったりしたら、僕もできるだけ伝えるようにしています。「男性用トイレでもオムツ替えができたらありがたいんですけど」って。

コレ意外にお店側は気が付いてなかったりして「アッ!男性用にはないんですね!検討します」みたいなことも多いんですよ。考えてみれば男性用トイレに女性店員さんは入れないワケで、そこはなかなか、気付けませんよね。

1個1個、そういう時に声をあげていくのが大事ですよね。「うちはママじゃないよ、パパがしている家もあるんだよ」って。地道なところから、身の回りの、小さなところから少しずつ、少しずつ。

――少しずつ、少しずつ、ですか。

樋口:そりゃ、思うところはたくさんありますよ。

「日本は人口が減っているから、子どもを増やせ」って言っている割には環境が整ってないし、保育園に入れないじゃないですか。

産めば産んだで自己責任だ、迷惑かけずに育てろっていうし、産まなかったら産まなかったで責められて。

監視社会で“しなければいけない”のオンパレード?他者から、ほとんど“強制”のように求められて。

子どもは「社会の宝」なんだから、みんなでやればいいのにね。

でもそんな“常識”が知らず知らず沁みついて、旧来の価値観に囚われている自分もいる。

「パパは外で働くもの、ママは家でご飯をつくるもの」

絶対にそんなの、おかしいですから。そんな価値観、子どもに手渡すことないですから。

もっといえば、いろんなカタチの夫婦や、家族や、恋愛や、性別があっていいんですよ。

――「みんなちがって、みんないい」。金子みすゞさんの詩の世界ですね。

樋口:そうそう。

でも、何でも型にはめたがって、大多数にしたがるでしょう?

ちょっとでも違うと「それおかしいよ」って。本当はそんなことないのにね。

既成の価値観から自由になって、これは子育てに限りませんが「男はこういうもの、女はこういうもの」とか「男らしくあれ」とか「女らしくあれ」とか・・・そういうのから脱しないと、世の中良くならないと思いますよ。

『東京パパ友ラブストーリー』の中にも出てきますけど「〇〇すべき!」という人に限って、正義という名の錦の御旗を使いたがる。でもそんな価値観は大抵、人から与えられたもの。「みんなそう言ってるし」って。

自分の幸せの価値観を、他者からの視点で得ている。

けど、そうじゃないでしょ?

その一方で「みんなちがって、みんないい」も、使いすぎると陳腐なものになっちゃうんですよね。今度はそれに、逆に縛られちゃうこともあるから。

難しいですね、人間の関係性はね。夫婦の関係性も、子どもがいる・いない、また子どもが成長してゆくに従って、どんどん変わってゆきますからね。

――いま家族や夫婦、性別といった価値観が、樋口さんご自身の中でも、また社会としても大きく変わろうとしているところなのかもしれません。『東京パパ友ラブストーリー』は、そんな“変わり目”だからこそ生まれた作品なのかもしれませんね。

では今日の最後に、ワンオペ主夫でもある樋口さんから、“変わり目”を日々模索しているリアル子育て世代の読者の皆さんに、メッセージをお願いいたします!

樋口:“母性信仰”という名の“同調圧力”には、屈する必要はないんですよ。もはや、そんな時代ではない。古い考えは捨てましょう。

日本のお母さんは、もっと手を抜いていい。「要らない苦労をすればするほどいい」って、要らないモノは要りませんから。

「要らない苦労はしなくていい」って『おっぱいがほしい!』のインタビューの時にも吠えたような気がするんですが、そこのところ、よろしくお願いしまーす(笑)

――そんな熱いコメントを残し、樋口さんは取材時に飲んでいたお茶の紙パックをキレイに畳んでゴミ箱に捨て、笑顔で帰ってゆきました。

“名もなき家事”をさりげなくこなせるのは、さすが主夫!とはいえ樋口夫妻がここまでたどり着くのにも、窓ガラスがビリビリ震えるほどの絶叫バトル等々それなりのご苦労もあったようで・・・

“猛禽類妻×ワンオペ主夫”のセキララ話は、また次回のハピママ記事「まず僕は(妻に)口答えはしない」ワンオペ主夫・樋口毅宏インタビュー【中編】」でたっぷり語っていただきます。ご期待ください!

15の春から中国とのお付き合いが始まり、四半世紀を経た不惑+。かの国について文章を書いたり絵を描いたり、翻訳をしたり。ウレぴあ総研では宮澤佐江ちゃんの連載「ミラチャイ」開始時に取材構成を担当。産育休の後、インバウンド、とりわけメディカルツーリズムに携わる一方で育児ネタも発信。小学生+双子(保育園児)の母。