もし、親が“あるがままの姿”を認めなかったら
“男の子として”または“女の子として”の枠組みで育てられ、自分の好みを主張したり、自分のしたいこと禁止されて育った子どもは、自らの気持ちを押し殺し隠すようになります。
やがて「変な目で見られたくない」「親に申し訳ない」と思い、自身のことを恥ずかしい存在とみなし、自己否定するようになります。
小学校に入学すると、男女別に行動することも多くなり更衣室、トイレも異なります。これらが原因で不登校になる子どもも出てきます。
やがて、思春期を迎え第二次性徴が訪れて髭がはえたり、生理がきたり、胸が膨らんだりするといった身体的特徴で深く悩むようになってしまいます。
その段階でも苦しい胸の内を誰にも打ち明けられないままでいます。
親たちに出来る、最も大切な事
男の子ならば、男らしく電車やミニカーで遊び、キャッチボールをするべき、女の子ならばママゴトや人形遊びをし、スカートを履くべきの理屈は“親の望み”であって、子どもの本心ではありません。
人間には多様な性があります。しかし、“男”か“女”という2つの枠組みしかないため、その枠組に合わない少数派の子ども達は苦しむことになります。
そんな時に、親は我が子を“1人の人間”としてその特性を認めてやる“応援団長”になることが最も大切です。
なかなか受け入れがたいことかもしれませんが、親としては努力して受け止めてあげましょう。ただでさえ「女のくせに」「男のくせに」と苛められやすい環境で幼稚園生活、学校生活を送るわけです。せめて家庭では子どもとって居心地のよい環境を作ってあげましょう。
そして、更に一歩進んで家族以外の子どものことを理解してくれる“応援団”を作るために幼稚園や学校側の対応を工夫してもらいましょう。
例えばクラスメイトにカミングアウトし、保護者会でもママ友たちに説明しましょう。服装だけでなく呼び方も女の子でも誰もが“君付け”で呼んであげたり、更衣室やトイレを変えてやるなどの配慮です。
迷ったら原点に立ち戻ってみて
もしも、あなたの娘が20年後、「私はこの女性と生きていきたい」と言い女性のパートナーを連れてきたら…もしも、あなたの息子が20年後、「僕はこの男の子と生涯を共にしたい」と男性を連れてきたら…
女なのに女性をパートナーとして選ぶ、男なのに男性を好きになったら親としては理解に苦しみ、全力で反対する人が99.9999%だと思います。
親としては子どもの将来を「成人して結婚して家庭を持って、私は孫を抱く」と平凡な普通のことを夢見ていたのにこれが打ち砕かれます。けれども、一番大好きな親から認めてもらえないほど子どもに取って悲しく辛いことはありません。
将来、年頃になって、愛する娘・息子が好きでもない人と結婚する方が不幸ではないでしょうか。たとえ同性の相手を選んだとしてもそれが本人の幸せなのですから応援してあげませんか。
多種多様性に合わせて個別に対応し、少数派には特別な配慮をする、これが教育の原点であり子育ての基本です。
“子どもを変えようとしないで、親が変わる”つまり親自身が子どもの受け入れられるように努力し認めてやることが愛情だと思うのですが、皆さんはどう思いますか。
【このコラムを書いた人の著書】