社会の恩恵を感じ難い構造となっている現代。
この閉塞状況を打破するためのヒントを探るべく、作家の佐藤優が若き知識人たちと語り合う。
著書『右肩下がりの君たちへ』(ぴあ書籍)より、哲学者の萱野稔人氏との対談「家族を持つということ」から抜粋して紹介。
恋愛結婚信仰が、結婚を難しくしている
佐藤 萱野さんとは何度もお会いしていますが、結婚や家族について話すのは初めて
ですね。
萱野 いつも戦争や革命、暴力といったつらいテーマになりがちですからねえ。
佐藤 「結婚」はもっとハードかもしれませんよ? トルストイの『アンナ・カレーニナ』の序文でも「幸せな家庭はみな一様に幸福そうである。不幸な家庭はそれぞれに不幸である」とあるじゃないですか。
萱野 いきなり不穏ですね(笑)。でもたしかに、結婚というシステムの起源まで遡っていくと、そんなにハッピーなものではなかったんだろうなという感じはあります。なんだか、いきなり夢のない話ですけど。
佐藤 萱野さんは基本的に国家主義的なアナーキストですからね。
萱野 いえいえ、いまはアナーキストの部分はほとんどなくなっておりまして、ただの国家主義者になってます(笑)。
佐藤 そのお話の続きもお聞きしたいところですが(笑)。萱野さんは、結婚の起源は不幸だとお考えなんですね?
萱野 そこは結婚を論ずる上でかなり核心的な部分なので、もう少しあとに取ってお
いてもいいでしょうか。
佐藤 ふふ、わかりました。
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