承認欲求が満たされるポイント2つ

ところで、くれさんは、自分の承認欲求を満たすために、どんな工夫をしているのでしょうか? そのポイントを教えていただきました。

くれ「特に産後ママや、小さい子を子育て中のママは、一番多くの時間を一緒に過ごしている子どもから褒められることもなく、必死ですから、承認欲求不足になってしまうんじゃないかなと思います。

専業主婦でいると尚のことですが、育休中で仕事から離れている産後ママのキャリア相談を受けると、他人からの評価や激励などを受ける機会がなくなるので、よりアイデンティティ・クライシス(※)に陥ってしまう方が多いなと感じます」

※自己同一性の喪失のこと。「自分は何者なのか」「自分にはこの社会で生きていく能力があるのか」という疑問にぶつかり、心理的な危機状況に陥ること。

くれ「そんなときに、どうやって承認欲求を意識的に満たすとよいか。先ほどお伝えした私の実体験を踏まえて、みなさんにお伝えしたいなと思うのは、以下の二つです」

1.自分を満たせる心の余裕をつくる

くれ「自分の気持ちの充実度をコップの水に例えると“充実したココロの水”を心(コップ)の中にたっぷり注げるように、心のコップの中を空にしておく必要があります。

そのために『余裕』をつくっておくこと。例えば、よく寝て体をスッキリさせておいたり、何もしなくていいんだと思える時間をつくることです。

『子育てに追われて、私何もできていないんじゃないか?』と無力感や焦りを感じることもありますよね。そんなときは、『今はこれでいいんだよ』と心の縛りを手放し、ゆったりとした時間を過ごせる自分になれることで、“充実したココロの水”がたくさん注がれます。

それが、周囲からの『承認』に気づき、前向きに自分自身を受け入れる心の土壌となります。

2.自分で自分を褒める

くれ「1の土壌ができた上で、自分自身に対しても、口に出して褒めてあげましょう。例えば、『今日はお掃除をよくがんばった!』『夕食がこんなにおいしくつくれた!』など小さなことでOKです。

それが積み重なってくると、自分自身への肯定感や、こんなふうに過ごせることに対して、他人、特に夫などへの感謝の気持ちが芽生えてくると思います。

そうすると、明るく前向きで楽しい子育てへ気持ちが動いていくので、周囲にもプラスの影響が生まれてきて、結果、感謝が感謝の言葉で跳ね返ってくることになります」

くれさんによると、子育てだけでなく、仕事やボランティアなど、社会的な立場として承認欲求を満たす場合も、上記のような意識が大切だと話します。

くれ「『この仕事ができる状況への感謝』『この活動ができることへの幸せ』などを、気持ちの余裕をつくって考え、自ら周囲に伝えていくことによって、いずれ周りの方からの意外なリクエストや、評価・激励の形につながっていくかもしれません。

『こんな評価がほしい』『こんな立場になりたい』という目標を持つことも良いことですが、まずは今ある状況をいろんな視点から考え、楽しく周りの方と関わっていける環境をつくることを大切にしてほしいなと思います」

くれさんの言葉は、とても心に響きます。その実体験からくるお話、ぜひヒントにして、承認欲求を上手に満たせるように動きたいですね。

【取材協力】くれ ゆかさんプロフィール

1978年生まれ。宝塚歌劇団宙組男役(芸名:潮和歌)として7年間舞台活動の後、大学で心理学・社会福祉を学ぶ。卒業後は(公財)日本生産性本部にて、企業研修企画や講師に従事。

二度の育休を経て、女性の自律的なキャリア形成の重要性を感じ、キャリアコンサルト国家資格を取得。2017年に退職、独立。Encourage Houseを設立し、女性や子育て中ママのキャリアデザインを支援。現在は、夫の転勤で上海在住。三児の母。