集団のルールが身につかない、こだわりが強くて同じことを繰り返したがる、ほかの子にはできることができない……。
子育てをしていると、どうしてもほかの子と自分の子をくらべたくなってしまうもの。「みんなはこうなのに、うちの子だけ違う」と思ってしまうと、不安がどんどん膨らんでいきます。
わが子がそんな子どもだったら? 日々、どう向き合えばいいのでしょう。
あるアトリエ教室の取り組みに、気になる子との向き合い方のヒントがあふれていました。
「子どものアトリエ・アートランド」を主宰する末永蒼生さんの著書『幼児期から思春期までみるみる変わる!困った子、心配な子の育て方』(講談社)から、そのいくつかをご紹介しましょう。
気になる子=発達障害児?
そもそも気になる子、とはいったい何でしょう。
近年は自閉症スペクトラム、ADHD(注意欠如・多動性障害)といった診断名を耳にする機会が増え、発達障害の認知度が少しずつ高まっています。
同時に、発達障害グレーゾーンと呼ばれる層も拡大しています。平成24年に公立小中学校の児童と担任教員を対象に文部省が行った統計では「(知的障害はないが)学習面または行動面で著しい困難を示す」生徒が全体に6.5%。
東京都内では、専門医はみな初診まで2~3か月待ちの状態で、診断が出たりグレーゾーンの子どもたちを対象にした「療育」のための施設にも希望者が殺到しています。
でも、気になる子がすべて、そうした発達障害の疑いがあるとは限りません。
末永さんは、視線が合わない、抱かれたがらない、一人で遊びたがるといった、いわゆる発達障害に多くみられるふるまいは、多くの子どもが成長する途中で見せるものでもある、といいます。
そして、発達障害のあるなしにかかわらず「どんな場合もまずは子どもの感情や気持ちに寄り添うことが必要」と訴えます。
子どもの気持ちに寄り添う5つの工夫
末永さんは、色彩心理研究家として50年にわたり、絵画や工作を通して子どもたちの心理と発達を研究し、潜在能力を引き出す方法を実践してきました。運営するアトリエ教室では、一般の子向けのほかに発達が気になる子を対象にしたクラスも展開しています。
こうした活動を通して末永さんが見いだした、すぐに実践できる「子どもの感情や気持ちに寄り添う工夫」を5つご紹介します。
(1)集団のルールが守れないとき
「順番を待つ」といったルールがなかなか守れない子には、頭ごなしに叱るのではなく、なぜルールを守ることが必要なのかをゆっくり言葉で伝えます。
そのときに効果的なのが、「身体に手を添える」ことと「肯定形で伝える」こと。
身体に手を添えると、子どもによっては注意力が高まり、話を聞いてくれるようになりますし、「〇〇しないでね」より「〇〇してね」と伝える方が、「今自分はどう行動すべきなのか」が伝わりやすくなります。
(2)子どもが「得意なことが何もない」と感じているとき
「得意なことがない」と思っている子どもは、「自分は何をやってもダメ」と感じがち。
どんなことでも「いいね!」をつけて応じてあげることで意欲が芽生え、「得意」を自分で見つけられるようになります。
欠点と感じてしまうことほど、「いいね!」と認めてあげて。行動がもたつく子は「いつも丁寧でいいね!」、落ち着きがない子は「元気でいいね!」と認めてあげましょう。
(3)熱中しすぎて気持ちの切り替えができないとき
目の前のことに精一杯になるほど、「何時までに」という約束は忘れてしまうことに。大人が「あと何分で終わろうか?」と子どもに問いかけ、時間をどう使うか自分に決めさせて「時間感覚」を育てましょう。
自分で決めたことなら子どもは積極的に守ろうとしますし、次第に自分で段取りをつけられるようになります。