新垣の「残すところあと1曲になりました」の発言で「ええええーーーーーーー!!!!!」と絶叫する会場。「歩いてる」のイントロが鳴る。新垣の同期である紺野あさ美、小川真琴がモーニング娘。を卒業した後、初リリースとなったシングルだ。きっと思い入れもひとしおだろう。「歩いてる/その先の空へ/まだ見ぬ未来へ/胸に愛を抱いて」という歌詞がミディアム・バラードをなぞって、新垣の気持ちをあらわしているような錯覚を覚える。
メンバーが退場し、暗転すると、すかさず「ガキさん!ガキさん!ガキさん!」のコールが鳴り響く。会場全体がキミドリの光に包まれる。スクリーンには、今日のためにお客さんそれぞれがつくってきたメッセージボードが、いくつもいくつもアップで映し出される。どの言葉もガキさんへの感謝をつづったものばかりで、思わず目頭が熱くなる。中にはガキさんのライブのお約束、「楽しかった人~!」というメッセージボードを作ってきたひとがいて、皆が「はーーーい!」と応える場面もあった。とにかく、ガキさんの卒業セレモニーのため、みんなが力を振り絞って声を出し、愛情や感謝の思いをステージに集結させているような、熱い、アンコールの時間だった。とてもとても長く感じられた。間もなく、モーニング娘。の7代目リーダーが卒業してしまう。
キミドリ色のドレスを着たガキさんがステージにあらわれ、挨拶をする。
「2012年5月18日わたくし、新垣里沙はモーニング娘。そして、ハロープロジェクトを卒業します」
よりいっそう歓声が大きくなる会場を制止するように、ガキさんが手紙を読み始める。憧れだったモーニング娘。に加入したときの話、プロの舞台を実感した時の話、先輩たちの背中を見て学んできたこと、自分の同期みんなが卒業して寂しかったということ、それでも遠くから支えてくれた同期のみんなへの感謝の思い、時折嗚咽で声を震わせながら、彼女は言葉を続ける。メンバーへのメッセージ、「この場を借りて、わたしも生田が大好きだよ」、「あしたからモーニング娘。のリーダーは任せた!」、つんくさんへのメッセージ、スタッフさんへのメッセージ、家族への感謝、「最後に、わたしの大切な、大切な、大切なファンの皆さんへ。記念日のキミドリ色のペンライトありがとう。キミドリのTシャツありがとう。お手紙ありがとう。いっぱい歌ってくれてありがとう。いっぱい踊ってくれてありがとう。いっぱい飛んでくれてありがとう。いっぱい笑顔ありがとう。いっぱい勇気を与えてくれてありがとう。みんなの愛をいっぱい感じた10年でした。みんなからの愛を胸に、わたしは前に進んでいきます。モーニング娘。大好き!!!みんな、ありがとう~~~~!!」
最後のソロとして新垣が選んだのは「Never Forget」。この曲は、初期メン福田明日香が卒業する際につんく♂から贈られたという歴史ある名曲だ。モーニング娘。リーダーの看板を背負った新垣里沙は、その名曲を、堂々とソロで歌ってみせた。普段ならコールを入れて曲を盛り上げるファンのみんなも、今日は最後まで静かに、その歌声に耳を傾けていた。