育児していると、自分の中にある「子育てはこうあるべき」「親はこうして当然」といった「子育ての常識」に囚われてしまうことが少なくありません。
子どもは、活発に外で遊ぶもの。
学校は行って当たり前。
友だちみんなと仲良くしたほうがいい。
……といった具合に、子育てにおいて当たり前と思っていることがそれぞれにあると思います。
ですが、よくよく紐解いてみると、それって本当に子どものため?と疑問がわいてくるようなものもあるはず。自分で気づくことができればいいですが、ずっとがんじがらめに囚われて、結果子どものためにもならず、自分をも苦しめるような「当たり前」なら、捨ててしまったほうがいいですよね。
子育てはもちろん、学校という教育現場でも同じようなことが起きているそうです。
厳し過ぎる校則や、大量の宿題、和が重んじられ忍耐が強要される風潮など、教育の「本当の目的」が失われているのが、今の学校教育だといいます。
そんな現状に疑問を抱き、次々と教育改革を起こしてマスコミに取り上げられて話題となったのが、千代田区立麹町中学校の校長・工藤勇一先生です。
改革を実践した工藤先生は、著書『麹町中校長が教える子どもが生きる力をつけるために親ができること』の中で、子どもが自ら生きていく力、「自律」する精神を説いています。
宿題をやること、定期テストでいい点をとることではなく、社会でより良く生きていくための力を伸ばすこと。
今回は、工藤先生が考える、子どもの「自律」のために親ができることを5つ、ご紹介します。
親が社会を否定しない
何か問題が起きたとき、つい何かのせいにしてしまうことはないでしょうか。
「社会が悪い」「学校が悪い」などと、子どもの前で発言しているとしたら、要注意です。
人が自分にとって都合の悪いことを否定したり、排除するのは脳科学の観点からみて当たり前のことだそう。ですが、可能な限り悪いことを何かのせいにするような言動は、子どもの前では避けた方がいいと工藤先生は言います。
なぜなら、物事を人のせいにする習慣がついてしまうから。
親が物事を人のせいにすることを見て育ったら、子どもはうまくいかないことを親のせいにするようになってしまいます。
なんでも人のせい、社会のせいにするよりも、何か問題が起きたら、「誰に相談をして、どんなふうに問題を解決するか」能動的に考える子どもに育ってほしいですよね。
そのためには、まず親が何事も人のせいにしないこと、少なくとも子どもの前ではそういった発言をしないことです。
叱るときは「子ども基準」で考える
子育てでは子どもを叱る場面も多いですよね。叱るときには、「親基準」にならないことにするのが大切だそう。
親が自分の中で「ここまでは許すけど、ここからは許せない」という線引きをしていると、どこかでひずみが出る、と工藤先生は話しています。
たとえば兄弟を育てていたら、兄弟といっても違う人間、得意分野も違えば、能力差もあるはず。もし、片方の子どもだけできないことが多ければ、その子だけが叱られ続けることになってしまいます。
人は、心的に危険な状況では、自分をうまくコントロールできません。子どもを叱り続けても、悪循環に陥るだけ。
叱るときには一度冷静になって、「子ども基準」で伝え方を考えること。そしてむしろ、「できなくても当たり前。でも、もし自分が困っているなら、工夫して変えていこう。どうすればいいかな?」など、安心感を与える言葉がけをしてあげてください。
子どもを誰かと比べたりせず、ありのままを受け入れて、どう支えるか……それが重要です。