「タイムマシン・クエスチョン」で子どもを変える
工藤先生が長年子どもと向き合ってきた中でわかったことは、「問題行動を起こす子に、怒鳴ったり脅したりなど恐怖を感じさせる方法では、行動を変えることはできない」ということなのだとか。
工藤先生が考える、そんな子どもを変える方法のひとつが「タイムマシン・クエスチョン」というもの。
たとえば、問題行動を起こしている中学生に対して、「20歳になったら、君はどんなことをしていると思う?」と質問し、未来を想像させます。
「大学生になっている」「アルバイトをしている」などと答えたら、「じゃあ、大学生の君は今みたいな行動をするかな?」と問いかけるのです。
「していない」と答えたら、「なぜ?」と質問を続けます。「かっこ悪いから」などと、答えるかもしれません。「じゃあ、いつ頃その行動をやめるのかな」とさらに質問し、子どもに「大人に叱られてその行動を変える」のではなく、「将来、自分の意思で問題行動をやめている自分を自覚」させるのです。
これによって、中にはその瞬間から問題行動を起こさなくなる子どももいるのだとか。
何事も、自分で考えて、自分で決める。そんな習慣をつけるのが大切なのですね。
汚い言葉遣いから「言葉がどう伝わるか」考えさせる
子どもが汚い言葉遣いをしていて気になる、というのは、特に男の子の親には多い悩みかもしれません。特に思春期には、親に対して暴言を吐く子どももいますよね。
そんなふうに子どもが目を覆うような汚い言葉遣いをしているとき、どのように注意しているでしょうか。
工藤先生は、言葉は「きれいか汚いか」よりも、「その言葉を受けた相手がどのように思うか」で問題になるのだと言います。もし、仲間内でふざけて使っているだけなら、それほど問題はないかもしれません。
汚い言葉を子どもが使うことで、あなた自身が不快になっているのであれば、「その言葉、私は傷つくよ」と伝えてみてはいかがでしょうか。
同じ言葉を使っても、不快に思う人と思わない人がいること、不快に思う人にその言葉を使うなら、それは攻撃しているのと同じだということ。
そんなふうに伝えて、一緒に言葉について考える機会にしてみましょう。
「読解力」より「伝える力」を磨く
最近の子どもは本を読まない、読解力が低下している、とよく言われます。それによって思考力が弱まったり、勉強ができなくなると考える人もいるかもしれませんね。
ですが、工藤先生は「読解力をあげようと『もっと子どもに読書をさせねば』と躍起になるよりも、子どもの特性に合わせた『伝える力』を磨くほうが大事」だと言います。
読み書きが苦手なディスレクシアの人の中にも、社会で活躍する人はたくさんいます。コミュニケーションを取ったり勉強したりする方法は、人それぞれだからです。
社会の中で生きていくことを考えれば、「自分の言葉が相手に伝わっているかいないか」を気にすることが重要。大人が子どもに話をするときに成人レベルの言葉を使わないように、「他者意識」をもって相手に伝わるように言葉を選ぶことが必要です。
今までの学校教育では、読解力をあげるために本や新聞を読むように勧めるばかりで、発信する力をつけるための勉強はほとんどされてきませんでした。
これからは、子どもたちが自ら考え、他者意識をもって「伝える力」を磨くことが求められています。
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自分で悩み考え選んだ道なら、たとえ失敗しても財産になる、と工藤先生は語ります。その決定を自分で下し、自律した人生を歩むことが大切なのだと。
それをサポートするのが親の役割でもあります。ぜひ本書を読んで、今回紹介したようなことを実践し、子どもの自律への歩みをサポートしてあげてくださいね。