境界線3:相談相手が冷静かどうか
離婚は、信頼できる第三者への相談が欠かせません。岡野さんは想定できる相談相手の傾向をこう分析します。
「まず、妻の親が冷静な判断をできるかどうか。『落ち着いて、子どもを産むことだけ考えて』と言えればいいですけど、浮気の場合は『とんでもない、離婚だ!』となるパターンが多いんです」
「弁護士さんはロジカルに物事を考え、関係修復をメインにする人は滅多にいません。『離婚の手続きに』と提案され、慰謝料は、財産分与は……と進んでしまいがちですね」
「カウンセラーによっては、感情が入ってしまうことがあります。友達にしてもそう。『私なら許さない』と、いいか悪いかだけで判断する人も少なくないんです」
回避できる離婚も、相談相手によっては誤った選択をしてしまうことも。自分自身が冷静である必要がありそうです。
境界線4:幸せになれるかどうか
「離婚すべきかどうか」を決定づける最大の境界線は「幸せになれるかどうか」。離婚の目的は夫と別れることではなく、子どもと自分が幸せになることです。離婚によって不幸になるなら、すべきでないのです。
「離婚を考えるとき、突き詰めると原因もあるし対処もできる。妊娠中の浮気の多くは、セックスレスが原因です。夫の性欲は変わらない一方で、妻は子どもを産むことに夢中。夫には浮気する理由ができてしまうんですよ。
セックスについては妊娠中でも工夫するとか、それが難しければ言葉かけですね、『ごめんね、生まれるまでは』って。夫への思いやりが大事です」
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岡野さんによると、妊娠中の離婚原因トップはやはり「夫の浮気」だそうです。しかし、だからといって「すぐ離婚しなくちゃ」と考える必要はないのだとか。
「どんなケースでも“離婚しないに越したことはない”、というのが私の考え方です。“妊娠中の浮気”というのは、もっともダメージレベルが高いもの。
だからこそ、出産を控えた大事な時期にあわてて離婚することはないんです。第一に赤ちゃんを元気に産むこと、第二にストレスをなくすこと。離婚については時間差で考えることが肝要です」
また、夫に浮気されないためには、居心地のいい家づくりも必要だといいます。
「夫婦は、毎日がお互いのプレゼンテーション。一日の限られた時間のなかで、自分のいいところを見せるんです。妻は夫がいちばん大事で、子どもは二番、という態度で接する。実際はちがってもね(笑)。夫は『この家は居心地がいいな』と感じ、円満になりますよ」
つまり、離婚の結論を急ぐのではなく、修復の努力をする。それでも離婚するなら、子どもも親も幸せになれる準備をしてから、ということですね。
岡野さんの強くあたたかい思いがあふれるインタビューでした。
●岡野あつこさん:夫婦問題研究家。
自らの離婚経験を活かし、夫婦の問題に悩み苦しむ人を一人でも多く救いたいという思いから、離婚カウンセリングという前人未踏の分野を確立。26 年間で 30,000 件以上の相談を受け、修復も含め、数多くの夫婦問題を解決に導いてきた。現在は後進の育成にも力を注ぎ、札幌・仙台・横浜・東京・大阪・名古屋・福岡で「離婚カウンセラー養成スクール」を開校。