何年も悩み、話し合ったけれど離婚してしまう夫婦もいれば、離婚寸前だったのに今まで以上に深い絆で結ばれる夫婦もいます。

今回は、『なぜ夫は何もしないのか なぜ妻は理由もなく怒るのか』『心が折れそうな夫のためのモラハラ妻解決BOOK』の著者であり、夫婦問題カウンセラーの高草木陽光が、2人の女性に離婚の危機に至った経緯と乗り越えられた理由を伺いました。

夫の妻ではなくて「母親」になってしまった女性

「夫が家を出て行ってしまったときに離婚を覚悟しました」。

そう語るのは、専業主婦の玲子さん(仮名・45歳)。

3つ年下の夫が休日を利用して通い始めた陶芸教室で知り合ったのがA子でした。月に2回通っていた教室がだんだんと増えていき、気付けば毎週欠かさず夫は陶芸教室に通うようになっていたそうです。

「随分と熱心だとは思いましたけれど、もともと凝り性なところがあったので、私は気にも留めていませんでした。まさか、そこで出会った女と不倫していたなんて……。

悲しいやら腹が立つやら、当時は思い切り怒りをぶつけまくっていました」。

玲子さんが夫の不倫を知ったのは、なんと夫本人からの告白でした。

「不倫」という道徳に反した行いに対して、その罪悪感に耐えきれず自ら暴露してしまう人が時々いるのですが、玲子さんの夫が、まさにその1人でした。

ある晩、突然「好きな人ができた。実は、付き合っているんだ」と言い出した夫。

その言葉の意味を理解するのに少々時間がかかりました。

「え? 何を言っているの?」。

玲子さんは混乱しながらも、驚くほど冷静に夫に質問し始めます。

しかし、自分の質問に対し、あまりにもA子についてペラペラと話しすぎる夫に無性に腹が立ってきて、目の前にあった雑誌を投げつけてしまいました。

その攻撃を避けるわけでもなく、じっとうつむいたままの夫に玲子さんは「あなたの顔を見るのもイヤ」と席を立ちます。

それから1週間後、夫は「アパートを契約してきた。しばらく頭を冷やしてくる」と言い、家を出て行ってしまうのです。

「離婚したい」と口にするわけでもなく、かと言って「A子と別れる」と約束したわけでもない夫は、一体どうしたかったのでしょう。

子どもがいない玲子さん夫婦は、結婚して15年、それなりに楽しく平和な結婚生活を送ってきました。

もともと身体が丈夫でなかった玲子さんは、結婚を機にそれまで勤めていた会社を辞めて専業主婦になりました。

終電で帰ってくることも珍しくなかった夫の身体を気遣い、食事のメニューにも気を付けていました。

部屋の掃除や片付けも毎日欠かさずして、布団も常にフカフカの状態にしておくことも忘れませんでした。

それなのに、なぜ?完璧な妻を、夫はなぜ裏切ってしまったのでしょう。