「夫が家を出て行ってから、私も自分なりに考えてみました。それで気付いたんです。私は、夫の妻ではなくて“母親”になっていたって……。

夫のためと思っていましたが、後から考えると、何もかも完璧にやりすぎてしまい、窮屈に感じていたんじゃないかと。

それに、夫は年下でおっとりしているせいもあり、いつも私が主導権を握ってアレコレと口を出しすぎていたところもあります。

夫は、母親のような妻ではなくて、恋人のような妻を望んでいたのだと気付いたら、他の女性に心を奪われてしまうのもわかるな、と思えたのです。

そのような考えに至るまで1年以上かかりましたけれど、当時は本気で離婚も考えていたんですよ。

夫が本気で不倫相手の女性を愛していて、相手の女性も本気で夫のことを愛しているのであれば、それは仕方がない。それなら私は手を引こうと思っていました」。

その後、夫はA子と別れたようですが、玲子さんと夫は別居をしながらお互いの気持ちの再確認を繰り返しました。

現在は別居を解消し、母親みたいな完璧な妻もやめて、適当で、ゆる〜い妻に徹したことで、夫は以前よりも自信に満ち溢れ優しくなったとのことです。

「ケンカをしないこと」が夫婦円満の秘訣だと思っていました

離婚の危機に陥る夫婦は、どちらか一方が何か大きな問題を起こしたり、離婚問題に進展しても当然と思える理由があったりするとは限りません。

「うちの両親は、私が高校生のときに離婚しました。ケンカばかりしている両親で、それが嫌で嫌で仕方ありませんでした。

そのせいなのか、自然とケンカをしなければ家族全員幸せでいられるという意識が刷り込まれていった気がします。結果的には、それは私の思い込みだったわけですけどね」。

こう話すのは、結婚9年目の仁美さん(仮名・37歳)。

現在でこそ、子どもを実家に預けて夫婦ふたりきりで月に1度はデートするという熱々のご夫婦ですが、今から3年前は離婚寸前の危機的状態に陥っていました。

結婚後すぐに長男を授かりましたが、出産1年後には職場復帰し、現在に至ります。

「これまで築き上げてきたキャリアも失いたくなかったし、育児も家事も手を抜きたくなかった」という強い責任感が、仁美さんを限界まで追い込むことになってしまうのです。

夫婦ゲンカを避けるために、夫に言いたいことがあっても我慢をし続けてきた仁美さんの身体に異変が起こり始めました。

不眠、めまい、頭痛、イライラ、そして激しい気分の落ち込み。朝起きられないことを夫から責められることもありましたが、それでも仁美さんは夫に心のうちを話そうとしなかったのです。

「そのときは、ケンカになるのが嫌で夫に話すとか相談するとかまったく思いつきませんでした。言い争いになるくらいなら離婚したいとか消えてしまいたいとか......そういう気持ちでした」。

仁美さんは、とうとう「このままだとあなたに迷惑をかけてしまうし、子どもにも優しくできなくなってしまいそうなので離婚してほしい」と夫に伝えたのです。

夫は、仁美さんがそこまで思い詰めていたことを初めて知ることになります。

「離婚しか現状を脱する方法はない」と思い込んでいた仁美さんに、夫は「なんでもいいから君の思っていることをすべて話してほしい。今まで苦しさに気付いてあげられずゴメン」と言ってくれたのです。

そこから仁美さんの感情は止まらなくなり、気が付けば結婚生活6年分の不満や不安を吐き出していました。

夫は最後まで話を聞き、受け止めてくれたそうです。

「私の勝手な思い込みで、言いたいことも言えない寂しい夫婦になっていたことに気が付きました。今では我慢せず、気になったことはその日のうちに話すようにしています。ケンカもしますよ」。

離婚危機に陥る原因も、危機を脱する方法も、元をたどれば「コミュニケーション」が必須だということです。

自分の考え方を改めたり、素直な気持ちを伝えたりしなければ、壊れかけた夫婦関係は破滅に向かうでしょう。

たとえ、現在離婚危機に直面していたとしても、夫婦で腹を割って話すことで、互いの思い込みや解釈の違いだと気が付けば、そこからいくらでもやり直すことができるということです。

たかくさぎ はるみ:夫婦問題カウンセラー。今までの相談件数は8000件以上。浮気・不倫、離婚、別居など多くの夫婦問題を解決に導く専門家。独身男女からの結婚前相談も多数寄せられる。カウンセリングの他、テレビ出演やセミナー、講演、コラム執筆など幅広く活躍中。HP⇒「HaRuカウンセリングオフィス」 ブログ⇒『みんな違って みんないい「オリジナル夫婦」で幸せになろう!』