松本「コンペ作品では、家族をテーマにしたものが多い印象です」
矢田部「ヒューマンドラマの基本はホームドラマなので、それは必然ですね。その中で松本さんに特にオススメしたいのは、新人の女性監督ハナ・ユシッチによる『私に構わないで』ですね。
ヒロインは20代半ばなのですが、家族全員を養わなければならない境遇。しかし家族を捨てて、自分の人生を生きたいという葛藤にとらわれています。
この作品が面白いのは、後半に家族への愛が噴出するところ。最初は憎々しい家族が、愛すべき存在に見えてくる。さらに映像センスが抜群で、松本さんのような若いクリエイターには参考になるはずです」
デートに最適な作品は?
松本「今年の日本映画は?」
矢田部「昨年は、ベテラン、中堅、若手という3人の作品でしたが、今年は次のステップを目指している新鋭ふたりを選びました。昨年、同じ位置にいた深田晃司監督を選んだのですが、その後あっという間にカンヌ国際映画祭で受賞を果たした。今回のふたりの監督にも、深田監督に続いてもらいたいです。
『雪女』の杉野希妃監督は主演も兼ねているだけでなく、海外とのコネクションを作って国際共同制作をするなど、プロデュース能力に長けていますよね。松本さんは、これからどんな作品を作っていきたいのですか?」
松本「私は青春映画を作っていきたいです。ただ、中高生や同世代ということではなくて、大人たちのこじらせた青春に興味があります。ちょっとファンタジーチックな」
矢田部「それなら、アメリカの『浮き草たち』がオススメですね。まさに、大人になりきれない人たちを描いている。
サスペンスタッチの恋愛映画で、今後ブレイクしそうな予感のカラム・ターナーという俳優が主演です。普段アート系はあまり観ない方にも、入りやすいということでもよいかと。国際映画祭のコンペ作品ということではなく、デートで観る作品としても最適です」
映画の好みはさまざまだが、1502本の中から選ばれたコンペ16作品は、見どころ満載の作品が揃っている。あなたのグランプリを確かめに行ってみてはいかがだろうか。
第29回東京国際映画祭
11月3日(木・祝)まで、六本木ヒルズ、EXシアター六本木 ほかにて開催中
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