時をかける少女 ©「時をかける少女」製作委員会2006

今年で29回目を迎える東京国際映画祭。

その目玉とも言えるのが、アニメーション特集「映画監督 細田守の世界」です。

細田監督と言えば、今最も新作が期待される映画監督のひとりとして、アニメファン以外にもよく知られていますが、こういった映画祭で特集が組まれるのは実は初めて。

これまでの作品を網羅する一挙上映を前に、改めて細田作品の“神表現”について見ていきましょう。

フォトギャラリー細田守監督の代表作を写真で全部見る
  • 「バケモノの子」©2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS
  • 「劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」©本郷あきよし・東映アニメーション
  • 「劇場版デジモンアドベンチャー」©本郷あきよし・東映アニメーション
  • 「明日のナージャ(OP、ED)」 ©東映アニメーション
  • 「おおかみこどもの雨と雪」©2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

ネットの中はワンダーランド!? 想像が広がる空間表現が神!

細田守監督の作品には、たびたび現実にはない不思議空間が出現します。

「劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」©本郷あきよし・東映アニメーション

たとえば『劇場版デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』や『サマーウォーズ』ではインターネットの中の世界が描かれました。

人々の分身でもあるアバター(もしくはデジモン)が行き交い、ゲームやバトルを繰り広げるシーンには本当にワクワクしましたよね!

また『時をかける少女』で主人公・真琴がタイムリープする際には、普段私たちが感知することのできない時空のはざまが、何桁ものデジタル数字の羅列によって表現されていました。

ネットの中や過ぎゆく時間など、一見映像化の難しいものを誰にでも分かる表現に置き換えて見せてくれるところは、細田監督ならでは。観客の想像力を刺激する“神表現”のひとつと言えるでしょう。

活き活きとした表情に注目! キャラクターの表現が神!

アニメでありながらも、人間味あふれるキャラクターは細田作品の魅力のひとつ。

「おおかみこどもの雨と雪」©2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

『おおかみこどもの雨と雪』では子育てに苦悩する母・花や成長していく子どもたちの心の機微を、『バケモノの子』では個性豊かなバケモノ世界の住人たちを、『サマーウォーズ』にいたっては、登場する親戚のおじさんやおばさんを見て身内の誰かを思い浮かべた人も多いのではないでしょうか。

モブキャラ(脇役)までも活き活きと描いてしまう細田監督ですが、そのスゴさは顔の表情にも表れています。

特に泣くシーンは秀逸。

感情が爆発し、涙が溢れるまで顔の筋肉の動かし方までキチンと作画されているんですよね。

また、『おおかみこども〜』以降は、プロのスタイリストを起用し、衣装の面からもキャラクター造形にこだわっています。これはアニメ作品としては異例中の異例! ここもぜひ注目してほしいポイントです。

音楽は映像ほどにモノを言う!? 音楽の使い方が神!

映画に音楽はつきものですが、細田作品においては音楽の果たす役割も非常に重要です。

細田監督の映画デビュー作でもある『劇場版デジモンアドベンチャー』では全編をとおしてラヴェルの『ボレロ』が流れ、深夜の団地を舞台にデジモン同志が戦うという非現実感を煽っています。

それはもう、子供向けとは思えないシュールさ!

そして『時をかける少女』ではバッハの『ゴルトベルク変奏曲』から「アリア」が使われていました。ピアノの旋律が放課後の空気感と相まってなんだかとっても切なくなるんですよね〜。

このように、細田作品では、実は音楽が隠れた主役と言っても過言ではないほど。

主張しすぎず、それでいて物語を盛り上げる、選曲の妙もお楽しみ下さい。

また、『おおかみこども〜』以降は音楽家の髙木正勝が劇伴を手がけており、より作品に寄り添った音作りになりました。監督と世界観を共有して作曲された音楽は、唯一無二の存在感を放っています。