ママが再び笑顔になるためにできることって?
光畑:一番のポイントは、ママが気軽に出掛けること。それに尽きるのではないでしょうか。
――え、そんな簡単な答えなんですか。
光畑:簡単でしょう?でも実際、お子さんが乳児の時期は、あなたも出掛けていらっしゃらなかった。それは何故かしら?
――それは……子連れでの外出は、やっぱり大変ですから。言うは易く行うは難し、ではないですが、現役ママからすると「そんな簡単にはいかないんだけど」というか。
移動中はもちろん、出先に授乳室などの施設があるとも限りませんし。
光畑:だからこそ、最初にそこで“ラク”をしましょう!
子連れ外出での苦労は、これまでのインタビュー記事(『授乳服・ケープどっち? “赤ちゃんを泣かせない”コツ【動画あり】』/『ママを追いつめる“母乳プレッシャー”、知って欲しい母乳の本当のメリット』/『“人前で授乳”は非常識!? 子連れママの「権利」と「公共マナー」の折り合いの付け方』)でもお話ししましたが、例えば母乳ママなら「授乳服」というソリューションを活用すれば、驚くほどあっさり解決できるものなのです。
「赤ちゃんと一緒に出かけて」かつ周りに「迷惑を掛けず」「気遣いをさせない」。
社会とのつながりを絶やさずに子育てをスタートできる、そんな選択肢もあるということなんですね。
――でも……そのためには、お金も掛かりますよね?
光畑:では、引き続き「授乳服」を例にしてお話ししましょう。私は約20年前に授乳服の開発を始めて今に至るのですが、機能性はもちろん、デザインにも気を配った授乳服を持って、初めて近所の母乳育児サークルを訪ねた時のことが忘れられません。
皆さん、拍手で迎えてくださるかと思いきや!誰も、商品を見てくれないんです。私と、目を合わせてすらくださらない。
聞いてみたら「素晴らしいモノだというのはわかるんだけど、自分には高価過ぎる」、「2,000円くらいなら買ってもいいけど、こんなに高くちゃ買えない」というんですね。
ちなみに、価格は約1万円でした。
――1万円……正直なところ、私もその値段では手が出しづらいです。
光畑:この20年余りの間、ママの考えというのは基本的にあんまり変わってはいないということでしょうか。
ママって、自分のためにはお金を使わないんですよ。子どもには出来るだけいいモノを選ぶママも、自分自身は、一番安いモノで済ませようとしたりする。
1万円という金額は、コストということで考えてみれば、例えばミルク代にしてみればおおよそ1~2カ月分です。つまり子どものためのミルク代だったら多くのご家庭が、躊躇なく捻出するお金なんです。
でも、ママが快適に過ごすためには使わない。なぜなら?
ーーなぜなら…
光畑:『ママは、我慢すればいいから。』そうではないですか?
――でも子どもが成長するに従って物入りになると思うと、自分のことは二の次になるというか……
光畑:繰り返しになりますが、ママが笑顔になるために必要なモノやコトまで我慢することが、子どものためになるわけでは決してないのです。
そしてこれは、なにも「授乳服」に限ったことではありません。調乳グッズにせよ、オムツにせよ、ベビーカーにせよ、抱っこひもにせよ、すべて同じことです。
ママは、もっと自分を大切にしていい。
当然これは「ママが欲しい物は何でもかんでも買っていい」ということではありません。そんなことは、私も家の財布を預かる者として、家計として無理です(笑)。
でも節約!節約!で“子どもの幸せ”に直結する“ママの幸せ”までコストカットされてしまうのは、ちょっと違うよね、と。
まるでママの世界は“ガラスの天井”で覆われていて、それは現代の日本社会が作ってしまったものでもあるのだけれども、ママ自身もそこから出ようとすらしていない。そんな風に思えるのです。
ママたちに、そのガラスを打ち破って、外の世界に出てきてほしい。社会との関わりを取り戻して、鬱々とした日々から抜け出してほしいのです。
――それで、楽に、気軽にお出かけをしてほしい、ということなのですね。