「宿題はもうやったの?」「早く勉強しなさい!」親がそんなふうに子どもを急き立てて、無理やり勉強させるようなことは本当はしたくないですよね。

小さいうちから子どもが自ら勉強し、自分の進むべき道をきちんと見極められる子になってくれたら、こんなに素晴らしいことはないと思います。

『世界に通用する一流の育て方 地方公立校から<塾なしで>ハーバードに現役合格』の著者・廣津留真理さんは、「塾や学校に頼らず家庭学習を重視する育て方」を打ち立て、その結果一人娘のすみれさんが日本の公立校から米国の名門ハーバード大学に現役合格しています。

「勉強しなさい!」と叱るどころか、娘さんに対して怒ったこともないという廣津留さん。本書には、まさに子どもが自分から勉強するようになるための家庭学習のメソッドが紹介されています。

今回は、小さいうちからでもできる、家庭学習のコツを廣津留さんに伺いました。

家庭学習は得意分野を伸ばして勝負すべし!

――妊娠中に200冊ほどの育児書を読んで「家庭学習を重視する」子育ての方針を決めたということですが、当初は娘さんがハーバード大学に入ることまでは想定されていなかったと思います。当時は、どのように育ってほしくて、家庭学習で育てようと決意されたのでしょうか。

廣津留真理さん(以下、廣津留):2点あります。ひとつは、未来から預かった命をとにかく大切にすること。それには、今ある世界や社会の仕組みを「教えずに」「ただ次々と見せる」ことで、世界を楽しんでもらうのが一番かと。世界の豊かさに気づいて、相手の立場もわかり、物事を広い視野で見られる子に育つとよいな、と思っていました。

もうひとつは、私は高校の教員採用試験にも合格しており、英語を教えたり翻訳したりしていたので、教育と子どもの発達に非常に興味がありました。

――幼少期から親が子供の学習に積極的に関わらないと型にはまった人間になりがちということですが、なぜそうなってしまうのでしょうか。

 廣津留:まず、地方都市では小さい頃から学習を塾に外注して、高校生になる頃には燃え尽きているお子さんが多いのがとても気になります。

彼らは大学生になったら就活塾や就活マニュアル通りにするのかと思うと、このような型にはまった生活がはたして今の世界の現状に合っているか疑問です。

これからはますます好きなことや得意分野を生かして生活していく時代になるでしょうから、5教科7科目まんべんなくできる目標よりも、家庭で培った基礎を中心に、何らかの得意分野を2つくらい武器に勝負できたら良いと考えています。

 ――親が得意なことを子に教えるのが家庭学習の基本、ということですよね。親が得意なことがない、自信を持って教えられる分野がない、といった場合には、何から手を付けるのがおすすめでしょうか?

廣津留:学習は、5教科7科目ではありませんよね。社会に出るとわかるように、5教科7科目は世の中のほんの一部で、さらに世界からみるとその学習の縛りがいかに狭いかわかります。

手先が器用、色彩感覚が豊か、人付き合いが上手、料理が好きでわりと得意、Instagramの写真をほめられる、実は昔バレエをやっていた、いつも歌っている、作文コンクール受賞歴がある、経営手腕がある、など得意なことはきっとあります。

実は、親は知らずに自分の得意を子どもに毎日見せているものです。それが生活習慣です。そこで、あえて親が自分の得意を「これだ」と特定して、子どもと一緒にやってみることで、お互い、その分野が伸びていくのが素晴らしいことだと思います。

苦手分野はそのあとで考えればよいのではないでしょうか。