恨んでも憎んでも、夫はいない…

衝撃の事実を知って、Iさんの胸には激しい怒りが湧き上がりました。

Iさん「こんなに怒りの感情を抱いたのは人生で生まれて初めてと断言できます。でも、怒りをぶつけるべき夫はもうこの世にいません。事実を知ってから、仏壇に手を合わせるのも嫌になりました。夫と一緒に建てたこのマイホームは、売却する準備を進めています。」

夫や不倫相手への怒りはもちろん、20年近くも夫の不倫に気付かなかった自分にも怒りが湧いたと言います。

そして、Iさんは、夫の不貞行為を知りつつ、それを夫に咎めることなく、口裏合わせやアリバイ工作に協力していた人たちにも、怒りを隠すことができませんでした。

不倫の事実を知る前では、「近くに寄ったので…」と仏壇に手を合わせに来た彼らを快く迎えていましたが、知ってしまったからにはそういうわけにはいきません。

Iさん「彼らから連絡が来たときに、『今後うちには一切来ないでください。一周忌も、うちではするつもりありません。手を合わせたいならお墓にでもどうぞ。』と伝えました。

不倫のことを『知ってたんですよね?』と伝えると、みんな深刻な表情をして黙りこむか、『すいません…』と小さな声で呟くか。

一番悪いのは夫だというのは分かっていますが、私はあの人たちも許せません。もう、誰も信じられないという絶望的な心境です。」

妻の立場として、Iさんの激しい怒りは当然と言えるでしょう。

もっと早く、夫が生きているうちに知ることができていれば、また違っていたでしょう。

夫に怒りをぶつけて責めることもできたし、夫に不倫をした理由を問いただすこともできたし、夫に不倫相手と別れてもらうこともできたかもしれないし、少しでも若いうちに夫に見切りをつけて離婚して第二の人生を歩むこともできたかもしれません。

でも、それはもうできないのです。やり場のない怒りを抱えたまま、時間の経過とともに薄れていくことを待つしかありません。

そして、生きている間も、死んだ後も、自分が一番お世話になるのは、他ならぬ『妻(夫)』であることを忘れないでください。

3万人を超える人の悩みを解決するコーチ&カウンセラーとして活躍。 2010年、その経験を活かしてコミュニケーション心理スキルを紹介する、コミュニケーションライターとして独立。一般社団法人日本聴き方協会認定シニアインストラクター・認定シニアカウンセラー。 [ブログ]