ソウルに40年以上住んでいる筆者が、ビギナーのためにお送りしている美味しい韓国料理作法。「【韓国】知っとくと、よりうまい!「韓国料理の美味しい作法」1【焼肉編】」に続いて、2回目の話題は冷麺(ネンミョン)。
前回の焼肉編で書いたように、韓国人は複数の食材や調味料を同時に味わうのが好きなのだが、そのなかでも例外的な存在が平壌式のムルネンミョン(スープのある冷麺)だ。
専門店の冷麺
冷麺はじつは朝鮮半島の北側(今の北朝鮮)の食べ物だ。麺がスープにつかった状態で出てくるもの(平壌式)と、麺に辛いタレがかかった状態で出てくるもの(咸興式)があるが、ソウルの老舗冷麺専門店では前者をメインにしているところが多い。
日本同様、焼肉の締めに冷麺を食べる人はいるが、専門店が存在することからもわかるように、冷麺は一品料理として独立した存在だ。
平壌式の冷麺専門店でも、サイドメニューとして咸興式を出しているところが多いので、注文するときは「ムルネンミョン ジュセヨ」と言おう。
澄んだスープは牛肉や豚肉、鶏肉や雉肉でダシをとったものが多い。日本の人はひと口含むとその淡白さに驚くはずだ。だが、飲み込むと上品な旨味が口中に残る。
そして、麺をすすると、日本の焼肉店の冷麺とはまったく違うことに気づくはず。日本の冷麺はゴムのような弾力があるものが多いが、平壌冷麺は蕎麦粉が多く練り込まれていて、その食感はむしろ日本蕎麦に近いと感じられるだろう。
淡白だが、奥行きのあるスープと蕎麦粉が香る麺は、シンプルな味わいを好む日本の人向きである。
日本蕎麦は香りを楽しむためにズズッと音を立てて食べてもよいと聞いたが、
韓国の冷麺は同じ蕎麦麺でも、大きなを音を立てて食べている人はあまり見かけない。単なる習慣の違いなのだが、日本式にズズッとやると周囲の人の視線を浴びることになるかもしれない。
また、韓国の汁物は器に直接口をつけず、スプーンですくって口に運ぶというマナーが、日本の旅行者にも浸透しているせいか、冷麺の汁をスプーンで飲んでいる人をよく見かける。
しかし、冷麺は例外なので、両手で持った器に口をつけて飲んでもかまわない。繊細な味わいのスープをしかり味わってもらいたい。
冷麺といっしょに出てくる副菜は、トンチミと呼ばれる大根の水キムチであることが多い。唐辛子を使った赤い白菜キムチと比べると、じつにあっさりした漬物だ。
トンチミには唐辛子はまったく使われていないか、使われていたとしてもごく少量。日本のお新香に混じって出てきても、わからないかもしれない。