"影の主役"敵幹部とリオとメレの魅力に惚れるべし!
ここまで紹介してきた見どころに加えて、本作の特色を決定付けているのが、ゲキレンジャーたちと相対する臨獣拳の幹部、リオとメレという二人の存在です。
リオは臨終ライオン拳の使い手で、幼少期に家族を惨殺されたトラウマから、ただひたすらに強さを追い求め、激獣拳を捨て臨獣拳へと寝返った拳士というキャラクター。
そして、メレは、理央の手によって蘇った臨獣カメレオン拳の女拳士で、その恩義と愛の為にリオに忠義を尽くすという、「悪役」としては非情に感情移入をし易いキャラ付けがされています。
実際、この二人は、本作においてゲキレンジャーと並ぶ、もう一組の主役と呼ぶに相応しい重要な存在です。
これも本作における大きな特徴の一つなのですが、敵の幹部であるリオやメレにも、ゲキレンジャーと同じく師となる拳法のマスターが存在し、彼らのもとで生死の危険も伴う厳しい修行を積むことによって、より強い自分になるべく、ひたむきに拳の道を突き進む姿が描かれます。
つまり、正義のヒーローと同じく、敵サイドの成長や努力の描写にもシナリオのリソースが注がれているのです。
敵のボスでありながら、更なる強さを求め、ゲキレンジャーの前に立ち塞がるリオ。そして、そんなリオに絶対的な愛と忠誠を誓い、ひたすら献身的に尽くすメレ。二人がシナリオの中心に立つ「主役回」も多く、本作に決して欠かすことができないキャラクターとなっています。
リオとメレの二人を巡る物語は、彼らとゲキレンジャーたちが幾度となく相まみえ、拳を交わし、お互いに自分自身の限界を超える為の鍛錬を経て、少しずつその立場を変えながら、また再び交錯し……という大河ドラマ形式の壮大なシナリオとなっています。
そうした様々なドラマを経て、遂にゲキレンジャーたちと和解し、真の悪を倒す為に共闘するという物語最終盤のドラマティックな流れは、少年誌のバトル漫画的な勢いと熱を有しており、まさに「燃える」シナリオとなっています。
そこに至るまでの二転三転も含めて、このクライマックスの展開こそが、『獣拳戦隊ゲキレンジャー』という作品が持つ最大の持ち味であり、まさに真骨頂と言えるでしょう。
本作のドラマ面を支えた影の主役であるリオとメレの人気はとても高く、後続のスーパー戦隊シリーズにおいても、実質的に戦隊ヒーローの一員としてカウントされる破格の扱いを受けています。
長いシリーズの歴史を振り返った時に、劇中でヒーローと共闘する組織や、正義の心に目覚めた敵キャラクターも点在していますが(例えば、『激走戦隊カーレンジャー』の「宇宙暴走族ボーゾック」、『魔法戦隊マジレンジャー』の敵幹部「魔導騎士ウルザード」など)、その中でもリオとメレは、屈指の人気を持つ名キャラクターであり、彼らの存在は、本作の魅力にストレートに繋がっているのです。
ここまで、その作品の魅力を語らせていただいた『獣拳戦隊ゲキレンジャー』。数多くの意欲的な試みと敵味方共に魅力ある登場人物たち、そして、各キャラクターが織り成す連続ドラマ的な展開は、本作ならではのカラーであり、本作は、2000年代のスーパー戦隊における異色作であると同時に、この作品ならではの見どころを数多く持ったチャーミングな名作なのです。
是非とも本作に改めて触れていただき、その10周年をお祝いしていただければと思います!