松田:息子の人生なんだから、息子が努力すればいい。親として、やりたいことに支援はする。

でも、それを放り投げるかどうかも息子次第かな、って。

Chacco:それが習い事とかでお金や時間がかかっていると、結果を求めてしまいません?

松田:私はあんまり結果は気にしてないかなあ。今もギターが欲しいと言って買って、習いはじめたりしていますが、もちろん続くかは分かりません。

でも、私だって習い事を突然辞めたりしていたし、「いわんや我が息子をや」ですよね(笑)。期待しないのが一番。

Chacco:もし松田さんが私の親だったら、人生違ってたかも。

松田:育てられた親の視点って、結構大事ですよね。私も自分の親の影響を受けていると思います。

私の息子は、私のことを「普通のお母さんとは違うな」と感じているとは思います。よく夜中飲み歩いたりもしてるし(笑)

Chacco:「普通のお母さんみたいになって欲しい」みたいなことは…

松田:言われたことないですね。そこは言わせないという圧をかけてるかも(笑)。もう13歳だし「私が働くことで、あなたは快適な生活ができてるんだよ」とは伝えています。

もちろんまだ自立はできないのはお互い承知ですが、「いつか下北で友達とルームシェアして暮らすんだ」とか言い始めたりして…。

Chacco:えー!ギターからの安定の下北沢!

松田:そうそう(笑)。で、「お金がなくなったときだけ、お母さんの所に帰って来る」と すでに“ヒモ生活宣言”をしています。

Chacco:羨ましい。

松田:いやいや(笑)。自立する意思を持ち始めているのが面白いですよね。「あなたの人生を切り開いていくのは誰でもない、あなたなんだよ」ということは常に伝えたいと思っています。

子どもの孤独は0にはならない

Chacco:私自身は、幼少期に親に甘えられなくて寂しかったという思い出があるから、自分の子どもにはなるべく優しく、というのをまず思ってしまいます。

子どもを認めてあげたい、自己肯定感を育みたい、でも、過度であってはいけないし、どう接するのが良いのだろうか…と。

松田さんの話を聞いていると、「これがお母さんのスタンス」というのをはっきりと伝えていくことで、子どもの中に育てられるものがあるのかもしれないなと思いました。

松田:孤独や寂しさはやっぱり誰にだってあると思うし、息子も人一倍寂しがりかもしれないと思うこともあります。

でも、孤独や寂しさなんてのは誰にでも大なり小なり一生消えないもの。その気持ちと自分自身の中でどう対峙するか、というところが大切なので、そこは、あえて母親である私が埋めに行こうとはしていません。

Chacco:なるほど、特に中二くらいになったらみんなそういう想いを感じることありますよね。

松田:あるある。

Chacco:子どもの孤独を0にしなきゃいけないような気がして、親が必死になってしまっていたとしても、0にはならなんですね。ハッとしました。出来る事を全てやれば子どもの不快は無くなって、親はそれ(不快をなくすこと)をやらなきゃいけない、という使命感みたいなのをなんとなく思ってしまっていたんですけど…。

松田:子どもが小さい時は、なるべく笑顔で、楽しい時間を増やしてあげるべきだし、私もそうしたいと思ってきました。

でも、幼少のころどんなに緑が豊かな場所に連れて行って、情操教育となるようにたくさんの自然体験をさせてあげても……みんなやっぱり年頃になると『スマホ中毒』になるんですよ(笑)。

***後編に続く(4コマあり)

 

松田紀子(まつだ・のりこ)
1973年長崎生まれ。『ダーリンは外国人』など数多くのヒット作を送り出し、コミックエッセイというジャンルを確立。料理雑誌「レタスクラブ」の編集長を兼任し売り上げをV字回復の後、19年9月にKADOKAWAを退社、(株)ファンベースカンパニーに合流。