モテと結婚はあまり関係がない
——アラ子さん自身は婚活経験がないんですね。
と:以前は婚活をしたことがあると思っていたんです。20代後半の頃、彼氏はいないけどゆくゆくは結婚したいと思っていて、合コンに呼ばれたら絶対行くとか、なるべく人が集まる場所に行くとか頑張っていたので。
でも、今思うとそれは婚活ではなく最近よく聞く“恋活”だったのかなと思います。最終的には結婚をしたいと思っているけど、やっぱり恋人を探していたんです。
タカコさんの話を聞いていると、恋愛をしたいという気持ちもあるけれど、「次に付き合う人と絶対に結婚したい!」という強い意志を持って活動していると感じます。
そして、探しているのは、同じ志を持った男性との出会いなんですよね。そういった活動が「婚活」なのかなと。
まぁ、それは私が勝手に考えている婚活の定義ですけど。
婚活している人に対して、我々のような婚活未経験者は「バーに呑みに行ったら出会いがあるんじゃない?」とか「習い事を始めてみたら?」とアドバイスしがちじゃないですか。
でもそれって既に婚活している人にとってはきっと、的外れな助言なんですよね。出会いがあればいいという話じゃない、と。私も以前はタカコさんにそんなアドバイスを偉そうにしていたので、反省しています。
——恋愛がしたいのか結婚がしたいのか分からないという20代〜30代の女性は多いと思います。
と:そうは言いつつ、タカコさん自身もブレがあるんですよね。書籍内には入っていませんが、Vコミで配信されているコミックスの続きのエピソードには、シングルズバーに行って結婚が目当てなのかどうか分からない人と出会うシーンが出てきます。
——アラ子さんがやっていたのは婚活ではなく“恋活”だったとのことですが、恋活で悩んだことはありますか?
と:私は“恋活”ではあまり悩んだことがないですね。自己肯定力がかなり強いタイプなので、自分のことを好きな人が現れると「見る目あるじゃん」と、わりと簡単に好きになっちゃうんです。
だから、自分のことを好きじゃない人を好きになったことがないし、もしもすごくタイプな既婚男性が言い寄ってきたとしても、そんなふうに自分を愛人扱いするような失礼な人なんて好きにならないと思います。
そんな経験はないので憶測ですけど(笑)。だから、恋愛に関しては幸せなタイプなんだろうなと思います。
今までお付き合いしてきた男性も、いわゆる「モテるタイプ」ではなかったと思います。夫には失礼な発言ですが、私は周りからは「理想が低い」と見られがちかもしれません。
でも、本当に私は自分のことを肯定してくれる人が現れると、すぐ恋ができるタイプなんです。
一方、タカコさんは自己肯定力がすごく低くて、とにかく恋人ができづらい。だから、私はタカコさんの恋愛話を聞いても全然共感できないんですよね。タカコさんも、私の恋愛観に全く共感できないと思いますが(笑)
私は人生でモテたことは1回もないですけど……。自分に好意を寄せる人がすごく少なかったとしても、自分はその中から充分選べるという自信があるんですよね。
逆にタカコさんは美人でスタイルもよく、好意を寄せてくる男性は多分とてもたくさんいるのですが、なかなか好きになる人が見つからない。
だから「モテ」と結婚ってほとんど関係ないことなんだと思います。
日本では独身者を「モテない人」としてイジる風潮は多いですが、そういうのすごくズレているなと感じます。あと、モテた経験があるから「選びたい」と思っちゃうというのもあるのかもしれないし。
モテたことがないから、好意を寄せてくれる人がいるだけで好きになってしまう、というパターンもあるでしょう。そう考えると、モテる上に惚れっぽい人が恋愛・婚活市場では最強なのかも……。
——でも、自分に自信がない人が「こんな自分を好きになってくれる人ならうれしい」と、付き合ってしまうところもある気がします。
と:自分に自信がない人って、多分そうじゃないんだと思います。自分をバカにしてくる人が好きなんじゃないですかね。
自分に自信がないから肯定されても信じられなくて、ちょっとバカにしてくるような人のことを「この人すごい!」って思っちゃう……。
——なんだか恋愛工学みたいですね。あれって、「美人だね」と言われ慣れている美人に向かって、あえて容姿を褒めることをせず「遊んでるんでしょ?」とディスって気を引くという……。
と:恋愛工学が好きな人は、そういうことを言う人が多いですが、タカコさんを見ているとあながち間違っていないのかなと思います。
だから、何回も不倫をしてしまったり……。自分に自信がないから、自分をぞんざいに扱う人が素敵に思えてしまうんですよね。
——アラ子さんの周りでタカコさんの他に婚活をしている人はいますか?
と:婚活をしている人は多いですね。この漫画を描き始めてから「私も婚活してるんだ」と連絡をくれる友人も何人かいました。
女性はきっと多くいるんだろうなと思っていたのですが、男性も意外と「婚活サイトに登録したことあるんだよね」とか「結婚相談所に行っているんだ」と教えてくださる方が多くて、それはちょっとびっくりしました。
男性はあまりオープンにしないだけで、意外とたくさんいるんですね。しかも、私からしたら大変素敵な男性ばかりで。
——影で頑張っているんですね。
と:正直、この作品を描き始めるまでは、婚活サイトや結婚相談所にちょっと偏見があったんです。自分で相手を探せない人が最終的に行くところなのかな? と。
でも、漫画を描き始めてからは偏見は一切なくなりました。
結婚したい人が結婚したい異性と出会うために一番効率が良いのって、婚活サービスを利用することだし、それは女性も男性も同じなんですよね。
むしろ今は結婚したい人にとって、婚活サイトや結婚相談所は一番良いシステムだなと思っています。もし自分が独身だったら絶対に利用したい。
——でも、婚活サイトなどを利用せず、自然な形で出会いたいと思っている人は多いのではないでしょうか。
と:でも、婚活サイトのメリットもたくさんありますよね。たくさんいる中から選べるので、自然に出会うよりも自分に合う人が見つかる可能性も高そうですし。
もちろん、知らない人と会うというのは心配な部分もあるかもしれません。でもほとんどの婚活サイト、結婚相談所では初めて会う際は指定された場所があったり、初回では連絡先を交換しないルールだったり、プライバシーに配慮した仕組みがあるようですよ。
結婚したいという気持ちがあるなら、もっと普通に出会いの一つとして使ってみるのもいいのでは。