メリット2:遺言の代わりになる

委託者は自身が亡くなった時(相続発生時)に、誰が信託財産の権利を相続するのかを事前に信託契約を結ぶことで指定することができます。そして、家族信託と遺言書が両方存在し内容が相違する場合でも「家族信託」が優先されます。

そのため、家族信託は遺言の代わりとして利用することができます。

メリット3:二次相続以降の資産継承先まで指定することができる

遺言は一次相続まで有効ですが、家族信託では二次相続以降も自分の財産の行く先を指定することができます。

例えば、先祖代々の土地や家屋などの不動産を後々まで複数の持ち分共有で相続することを避けるために、二次相続以降の発生時も引き継ぐ権利者を指定しておくことができます。

家族信託のデメリット

デメリット1:税金対策にはならない

家族信託は基本的に税金対策にはならず、所得税の損益通算や損失の繰り越しもできません。また、信託財産から一定以上の収益がある場合は、税務申告が必要で手続きの負担が増えます。

デメリット2:遺留分を侵害する可能性がある

家族信託の契約をしたことで、受託者以外の他の相続人の遺留分(相続人の最低限の相続分のこと)を侵害する可能性があります。相続人の遺留分を考えずに家族信託を契約することは、将来の相続トラブルの元になるので注意が必要です。

家族信託を契約する場合は、メリット・デメリットを考えて利用しましょう。

手続きにかかる費用

家族信託を契約する場合、実際にどの位の費用がかかるのでしょうか。

家族間の契約なので高額な費用はかかりませんが、基本的に素人が作成するのは難しいため、専門家に相談や書類作成を依頼することになり費用がかかります。また、財産に不動産がある場合や公正証書を作成する場合は別途費用がかかります。

そのため、どの程度専門家に依頼するのか、また信託財産の資産価値によって金額が大きく変わってきます。具体的にどの程度費用がかかるか確認したい場合は、見積もりを依頼して確認した方が良いでしょう。

家族信託を取り扱っているのは、司法書士・弁護士・行政書士など法律の専門家です。信託財産の中身やどのように管理して欲しいかを考えて依頼先を選ぶのが良いのではないでしょうか。

大事なことは、家族信託は委託者の判断能力があるうちにしか契約できないということです。必要性を感じたら、早めに委託者や家族の意向を話し合い必要な行動をとりましょう!

【執筆者】田端 沙織(たばた さおり)

キッズ・マネー・ステーション認定講師/ファイナンシャル・プランナー
証券・運用会社で10年以上の勤務経験を活かし、FPサテライト(株)所属ファイナンシャルプランナー 兼 金融教育講師として、「正しく・楽しく・分かりやすく」お金のことや資産運用について伝える活動をしています。得意分野は資産運用。2男1女を絶賛子育て中。

「見えないお金」が増えている現代社会の子供たち。物やお金の大切さを知り「自立する力」を持つようにという想いで設立。全国に約300名在籍する認定講師が自治体や学校などを中心に、お金教育・キャリア教育の授業や講演を行う。2023年までに2000件以上の講座実績を持つ。公式サイト「キッズ・マネー・ステーション