2.解決策を一緒に考える

松永「もう一つのポイントは、解決策を子どもに投げかけ、一緒に考えることです。言葉が出ない子には『こうしたらどう?』としぐさを交えて提案します。話せる子には『どうしたらいいと思う?』と尋ねます。

親はついつい、頭ごなしに叱りつけたり、『こうしなさい、ああしなさい』と指示命令を出したり、『〇〇が悪い』と決めつけたり、裁判官になって裁いたりしてしまいますが、それでは喧嘩から子どもは何も育ちません。

『お兄ちゃん(お姉ちゃん)なんだから……』は厳禁。上の子の心をゆがめてしまいます。

では、どのタイミングで介入するか。ある程度、子どもたちが叩き合って、やり合った後のほうが良いでしょう。ある程度の年齢になると、とことんぶつかって片方が泣き出してから、あるいは互いに引くに引けない状態になってからのほうがよいと思います。

そのままにしておくと、最終的には自分たちで解決していくこともあります。子どもたちがこれまでに喧嘩を重ね、喧嘩の解決方法を学んできていれば、親の力は必要ありません。喧嘩させておけばいいのです。

とはいえ、気になってハラハラ、イライラして『いいかげんにしときな』と待てないことが多いですよね。そんなときも、我慢、我慢です」

「衝突からの学び」を大切に

子どもたちの喧嘩に、ついつい親は介入しようとしてしまいますが、安易な行動は大切な「学び」を軽んじることにつながってしまうようです。

松永「今の世の中は、子どもの喧嘩を良しとせずに、すぐに親や大人が止めに入り、子ども同士が本気でぶつかり合ったり、叩き合ったり、殴り合ったりという経験がなくなってきました。

身体的な暴力、言葉の暴力の経験不足から、大きくなってから節度・程度が分からずに無茶苦茶なことを平気でしてしまうことが増えて来ていると感じます。

腹が立って人を殴り殺したとか、相手を自殺に追い込むほどの誹謗中傷を繰り返したなどということも耳にします。

子どもの頃に、きょうだい喧嘩などの経験を体感して来ていれば、そのような事態は起こらないのでは、と思っています。

人の気持ちを考えなさい、思いやりを持ちなさいと繰り返し言われて育っても、いじめは減るどころか今も増え続けています。幼児期から自分と人の思いや考え、感じ方や見方の違いを、喧嘩を通して心で感じていないからと考えます。

『衝突(喧嘩)からの学び』はこれからの時代、ますます大事にしていきたいですね」

普段の何気ない子どもたちのきょうだい喧嘩について、どう対処すべきか、またどう教えるべきかを迷っていたなら、ヒントになったのではないでしょうか。

まずは親が、「学び」の貴重な機会としてのきょうだい喧嘩を大切にすることが重要といえそうですね。


【取材協力】松永高弘さん

一般社団法人子ども子育て・教育研究所(クペリ)の代表。中学高校教員、幼稚園園長の長年の経験をもとに子育て相談、研修や講演を実施。学校や園の教育サポートも行う。「まっちゃん」の愛称で親しまれている。