“教育虐待”という言葉を聞いたことがありますか? どうもおどろおどろしい響きで、自分には縁遠い言葉のように感じてしまう人が多いはず。

しかし、この教育虐待は、現代の子育て家庭であればそこにでも起こりうることなのです。

教育虐待とは何か? なぜ起こってしまうのか?

今回はそんな気になるポイントを『ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』から紹介します。

“教育虐待”って何?

本書の中で“教育虐待”とは、

「あなたのため」という大義名分のもとに親が子に行ういきすぎた「しつけ」や「教育」のことである。出典(『ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』著・おおたとしまさ)

と説明されています。

この説明だけを見ると非常にシンプルで、「なるほど」と納得感がありますが、その一方で「まさか自分がしているわけがない」「勉強は頑張らせているけれど、虐待と言われるのは心外」そう感じる人が多いかもしれません。

しかし、この教育虐待は何も周囲から見て「ちょっと子どもがかわいそう……」と顔をしかめてしまうような教育方法や、しつけばかりを指すものではないのです。

実際、本書の中でも、

2012年8月23日付の毎日新聞に掲載された記事によれば、「子どもの受忍限度を超えて勉強させるのは『教育虐待』」とのこと。出典(『ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』著・おおたとしまさ)

と語られています。

さらに、現代はただ勉強ができて有名大学に入るだけでは足りない、と皆が思い込んでいる時代です。

有名大学に入るのは当たり前。コミュニケーション能力や語学力、プログラミングなどの“オプション”がなければ……そんな親が子育てに感じるプレッシャーが、知らず知らずのうちに子どもを追い詰めて、教育虐待を招いてしまうのです。

“教育虐待”を招く親はどんなタイプ?

それでは、なぜ教育虐待は起こってしまうのでしょうか? 

原因は、現代の学歴というものの位置付けや環境などさまざまですが、今回はとりわけ、親の中にある原因を紹介します。

1: 親が学歴コンプレックスを持っている

まず、多くの人が想像しやすいパターンは、親の学歴コンプレックスによるものではないでしょうか。

自分には学歴がなくて苦労したという親は、子どもになんとしてでも学歴を授けようとする出典(『ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』著・おおたとしまさ)

本書の中でも、こう語られています。

このタイプの親は、学歴で得られるであろうメリットばかりに目が向いて、その際に子どもが受けるストレスやコストを理解できない傾向があるのだそう。

つまり、自分自身が手に入れたことのないものを手に入れる上手な方法がわからない、手に入れる過程のストレスがわからない、だから子どもに過度なプレッシャーをかけてしまうということですね。

2: 親自身が高学歴

幸か不幸か、常に最短ルートを進むことができてしまったひとは、最短ルートから外れることを過度に恐れる。子どもができれば、子どもにも最短ルートを歩ませなければいけないと思い込んでしまう。出典(『ルポ教育虐待 毒親と追いつめられる子どもたち』著・おおたとしまさ)

これが、高学歴の親が陥りやすい子どもへの教育虐待の原因だとか。

自分自身の中に「高学歴を得た成功体験」がある親は、子どもに苦労をしてほしくない、自分自身が安心したいがために同じ道を歩ませようとする傾向があるのだそう。

また自分自身の成功体験から、勉強方法なども強要してしまいがち。

一度でも道を踏み外したらおしまいだという親の強迫観念は、子どもにも伝わってしまうものです。

これではせっかく学歴を得ても、今後の人生を「踏み外さないように生きなければ」という不安を抱えたまま送ることになります。