親にできることはそう多くはない、というあきらめも必要
――まだあまりこちらのことがわかっていない「世界に不慣れな」赤ん坊に対して、「ここはいいところだよ」「きっと幸せになるよ」と話しかけてみる…という文面がありましたが、とても素敵な言葉がけだなと思いました。
山崎「『親が教えられるのは、生を無条件に肯定することだけだ』と聞いたことがあって、だから、難しいことは教えなくてもいいや、とにかく、『生きているのは楽しい』ということだけ伝えたい、と考えています。それで、『楽しいねえ』『わくわくするねえ』といったことをよく言っています。
あとは、まど・みちおさんの詩集をよく読んでいました。
――赤ん坊の目線を通して、「ここは美しい世界なのだなあ」と感じる、とありますが、他にも赤ん坊を育てることによって改めて気づいたことや感じたことはありますか?
山崎「今は一歳半になり、『ぞう』『うま』『ちょうちょう』など、街を歩いていると、動物のイラストを指差してカタコトで喋るので、私も影響を受け、ひとりで歩いているときでも、象や馬や蝶々のイラストが目につきます。世の中、随分と動物のイラストが多いなあ、と気がつきました。
――エッセイは赤ん坊が1歳になったところで終わっていますが、今後は2歳、3歳となって言葉を発したり、意思疎通がもっとできるようになってくると思います。「汚して、洗って」を繰り返していってもらいたい…という話も書かれていましたが、どんなふうに育てていきたいですか。
山崎「私は、性別イメージにとらわれない服を着たり、行動をしたりするのが好きなのですが、もしかしたら、子どもは、性別イメージに合った服が着たかったり、自分の性別らしい行動を好むかもしれません。
その場合、子どもにとっては、『性別イメージにこだわらない方がいい』という私の考えの方が汚れになると思いますから、私ではない周囲の人から影響を受けながら、その道を進んでいって欲しいです。
今後は、親にできることはそう多くはない、とあきらめて、とにかく、お腹いっぱいにさせてあげたいです。
受験勉強のときに夜食用のおにぎりを作りたい、などと夢想しています」
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自分の中の「母親」イメージが負担に思えるママは、一旦それを置いておいて、「親」としてどう我が子と向き合おうか…と考えてみるのもいいかもしれません。
そんなふうに肩の力を抜いてフラットに考えることができたら、もっと育児を楽しむことができそうですよね。
『母ではなくて、親になる』には、山崎さんの子どもが1歳になるまでの月齢ごとの成長や、そのときどきに山崎さんが思ったことが丹念に描かれています。
自分が「理想の母親像」に縛られているかも…と感じたとき、育児に行き詰まったとき…ぜひ、本書を手にとってみてくださいね。